1950年代の演奏

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック(1950)

CD1(SONY SRCR-8677)
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:08/11:17/5:51/8:28
    (リピート無し:ワルター版)
CD2(MUSIC&ARTS CD-1137)
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:12/11:26/5:56/8:38
    (リピート無し:ワルター版)
 ブルーノ・ワルター指揮
    ニューヨーク・フィルハーモニック
   録音1950年2月13日

 ワルター3度目の録音。ニューヨーク・フィルとは1941年以来の録音でした。戦後になって当時のアメリカではトスカニーニと人気を二分していました。この個性的なワルター流の解釈は面白いです。
 交響曲第5番第1楽章の冒頭のフェルマータは長く7倍ほどです。提示部の勢いの良さが素晴らしいです。そして第2主題でテンポを若干落としてテンポアップしています。展開部231、232の2小節でぐっと落として一旦間をおくルフトパウゼにびっくりですが、再現部で今度はファゴットのファンファーレにホルンを重ねるワインガルトナー版を使います。423小節と425小節のヴァイオリンのsfのフレーズの強調は鮮やかで、その直前に一瞬の間を置くという離れ業は誰にもまねのできないものでしょう。439小節から454小節まで木管のフレーズにホルンを重ねて強調しています。コーダでも長いフェルマータとそのあとにたっぷり間をおいています。
 第2楽章の歌わせ方は素晴らしくまさにドルチェです。第1変奏の弦の美しさにはうっとりです。第2変奏の低弦の響きは厚みがあります。木管四重奏はこれもきれいでした。第3変奏の木管は8分音符を短めに演奏しています。第4変奏のクライマックスは最高の響き、第5変奏のファゴットの演奏がきれいでした。この短い変奏をドルチェで見事に歌っています。 
 第3楽章は序奏で低弦のsfpを強調していますがワルターほど極端な演奏は他にあまり聞かれません。ホルンのテーマはかなりの強奏です。フーガは重厚な響きを出したもので微妙にテンポを落としています。コーダの緊張感は見事です。
 第4楽章突入の前に一瞬の間をおいています。ハ長調の響きは明るくそして厚みがありリズムが弾むようにすすみます。フレーズが実に見事に楽器から楽器へつながっています。また132小節から136小節まで木管のフレーズにホルンを重ねて強調しています。これは驚きます。コーダに入ってホルンの主題の美しさ、プレスト前の緊張感は素晴らしく怒涛の和音に入りますが最後のフェルマータが驚きでザザ−ンと聞こえます。わざと金管をずらしたか、あえて2つの音を吹かせたかは不明ですがこれは驚きの演奏です。 
 この演奏はワルターの個性が十分に発揮されたもので全曲にわたって魅力あふれる演奏です。たっぷりの満足感を得られます。これぞ名演。


トップへ
戻る
次へ