1980〜1999年の演奏

渡辺 暁雄/日本フィルハーモニー交響楽団(1980)
LP(日本フィル自主製作盤 JPSR1001)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:42/10:48/5:08/9:02
    (第1楽章リピート:原典版)

  渡辺 暁雄/日本フィルハーモニー交響楽団
   録音 1980年2月6&8日 杉並公会堂

 これは日本フィルの自主製作レコードです。若林駿介氏の録音でした。このコンビのシベリウスは伝説の名演を生んでいますがこの翌年1981年には2度目の全集を録音していました。
 交響曲第5番の第1楽章は理想的な響きの冒頭です。ホルンの音量の豊かさといい、弦楽器のつややかさといい、この演奏は渡辺が引き出している音楽を忠実に表現したものといえましょう。展開部のレガートの美しさもさることながら、オーボエカデンツァがなぜか物悲しく、ふとトゥオネラの白鳥を思い出してしまいました。再現部は力強い演奏をしています。
 第2楽章はゆったりとしたテンポで歌っています。実に見事な調和のとれた響きがあります。このような名演をレコードでしか聴けないのはまことに残念です。この楽章には渡辺の思い入れを感じます。丁寧に丁寧に演奏しています。木管四重奏は抑えのきいた美しさといいましょうか。第3変奏の悲しそうな響きがなんとも言えません。美しい楽章でした。
 第3楽章は静かな冒頭とホルンの強奏が対照的です。トリオまでの経過部も聞きものです。そしてフーガの素晴らしい演奏もさすがでした。いい演奏ですね。フィナーレまでの経過部の管楽器の音が溶け合っていました。
 フィナーレは思いきって大音量を出しているかのようでした。確かにそこまで抑えられてきた鬱憤を晴らすかのようです。展開部の管楽器の美しさもいいですね。ピッコロがよく響いていました。第3楽章の回想でのオーボエもきれいです。再現部はまず管楽器の分厚い響きを前面に出していました。この演奏はことさらにティパニを強打しないでオーケストラの一部として扱っていて全体の響きが調和の取れたものになっています。コーダではピッコロを前面に出すことで明るさを見せています。そして重厚な響きと共に終わります。 
 見事な演奏でした。日本にもいい録音があるものです。


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