1950年代の演奏

ウィルヘルム・フルトヴェングラー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1950-2)
CD(Danacord DACOCD301)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  8:24/11:36/6:09/8:42
 (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音 1950年10月1日コペンハーゲン・ライヴ

 これはヨーロッパ演奏旅行の時のライヴ録音です。9月25日にストックホルムで演奏の6日後でした。演奏内容は54年のスタジオ録音に近いのですが、生演奏のときの聴衆を引きつけるうまさはこちらが素晴らしく、ぞくぞくします。ストックホルムの時よりも演奏時間は全曲で2分も遅いです。CDの音質は良いです。

 交響曲第5番の第1楽章は鮮やかな冒頭で、程良いテンポで重量感あふれる響きです。ホルンのファンファーレは見事なスフォルツァンドです。弦楽器の美しい響きと力強さがあります。展開部では緊張感が漂い厚みのある響きが聴かれます。木管とホルンの対話ではホルンの暗い響きを実に見事に出しています。再現部のホルンのファンファーレも素晴らしいです。ここはホルンだけで吹いています。コーダのフェルマータの後の間は長く47年の演奏のようです。これぞフルトヴェングラーです。
 第2楽章は弦楽器の主題が大変美しいです。フォルテの時の低弦の1音はずっしりと響きました。第1変奏のときのウラッハのクラリネットの美しい音が感動的です。第2変奏のピアニシモが素晴らしいです。これを生で聴いたら背筋ぞくぞくでしょう。木管四重奏の美しさは絶品です。木管の第3変奏で8分音符は伸ばしていません。しっとりとした実に感動的な演奏です。第4変奏のファゴットソロが弱奏ではっとさせられます。最後の1小節は長く引っ張ってくれます。さすがです。
 第3楽章は冒頭のリタルダンドをたっぷり遅くしてくれます。それだけにホルンのテーマが明るく力強く感じます。力強い響きのフーガも見事です。フィナーレへのクレッシェンドはたっぷりと伸ばして第4楽章へなだれ込みます。
 感動的なフィナーレです。重厚で勢いの良さは見事で、ティンパニが暴れないことが良い響きを作っています。バランスの良さは見事でした。展開部のトロンボーンの強奏もいいです。第3楽章の回想は見事なピアノです。それだけにクレッシェンド効果は抜群です。これは絶好調の時の演奏です。コーダのホルンの主題も美しく、ピッコロも目立ちすぎず、実に見事に鳴り響いています。コーダのプレストで走り、和音で落とし最後は気を持たせて終わるという生演奏の素晴らしさがありました。

 これは3つのウィーン・フィルの録音の中で一番感動的な演奏でしょう。私の生まれた1950年にこんな演奏があったというのも感激です。音質の良さ演奏の良さは素晴らしく、久々に聴いて感動の連続です。これぞフルトヴェングラーの「運命」といっても過言ではないでしょう。


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