1950年代の演奏

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団(1952)


CD1(RCA BVCC−7003〜7)全集
CD2(RCA BVCC−5223)
CD3(RCA 74321 55836 2)

ベートーヴェン/交響曲全集
CD1の4&CD2
1.交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  7:12/8:50/4:37/8:23(29分02秒)
  (第1楽章リピート:トスカニーニ版)
2.交響曲第8番ヘ長調Op93
3.序曲「レオノーレ」第3番Op72b

  アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
    NBC交響楽団
  録音 1952年3月22日(1)
      1952年11月10日(2) 
      1939年11月4日ライヴ(3)

 トスカニーニがNBC交響楽団とカーネギーホールで録音したベートーヴェンの交響曲全集です。その中の1枚を紹介します。CD1は1990年発売の国内盤全集、CD2は1992年発売の国内盤、CD3は1998年発売のEU盤です。
 交響曲第5番「運命」は冒頭のフェルマータをたっぷり伸ばしています。間のおきかたも素晴らしいです。ホルンのファンファーレは素晴らしい響きです。展開部のクレッシェンドは鮮やかで気迫に満ちています。オーボエのカデンツァもきれいです。再現部のファンファーレはファゴットにホルンを重ねています。363小節から368小節で木管楽器の音型にホルンを重ねています。また454小節のホルンは四分音符2つですが、これを2分音符に変えていました。コーダの力強い終わり方は見事な演奏です。第2楽章はやや速めのテンポですがが主題はきれいに歌います。強弱の付け方は申し分ないもので、弦楽の素晴らしい演奏は聴きものです。第2変奏のファゴットとクラリネットの響きもきれいです。木管四重奏で若干テンポアップ気味になっているのが興味深いです。クライマックスの厚い響き、第3変奏の木管も良い響きです。第4変奏のファゴットの美しい響きには驚きです。終結部も素晴らしい響きです。第3楽章の序奏でフェルマータを長く伸ばして間をおいてからホルンの主題に入るところはトスカニーニ独特でここは素晴らしいです。またフーガの弦楽のうまさと見事なアンサンブルも聴きものです。フィナーレ前の弦楽とティンパニのクレッシェンドは緊張感が伝わってきます。フィナーレは速めのテンポで金管の強奏は素晴らしい響きです。展開部の緊張感、力強いティンパニのあとにくる第3楽章の回帰は再現部への緊張感に包まれ素晴らしいクレッシェンドと共に入る再現部の音量は凄いです。コーダはホルンの主題とピッコロの高らかな響き、プレストに入ると素晴らしい響きで、これぞ第5番です。最後のフェルマータはティンパニの一打で終わる感動的なものでした。
 交響曲第8番は第1楽章冒頭の弦楽の華やかさとトランペットの強奏は聴きものです。深みのある響き、木管のユニゾーンもきれいです。展開部から再現部の弦楽の厚い響きと乱れのない演奏には圧倒されます。終結も感動的です。第2楽章のスケルツァンドはメトロノームのようなリズムを刻むのが特徴です。快適なテンポで演奏しています。メリハリの付け方は凄いです。弦楽の緻密な演奏はここも驚きの素晴らしさがあります。第3楽章のメヌエットは大変良い響きで、上向フレーズの強調があります。トリオのホルンの二重奏の流麗な演奏とクラリネットの響きの美しさは見事です。このメヌエットの聴きどころです。第4楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ、弦楽の刻みの素晴らしい響きと、勢いのある演奏が素晴らしい。強弱の付け方はトスカニーニのベートーヴェンの聴きどころです。この第8番も感動的で大変な名演奏です。
 序曲「レオノーレ」第3番は、このNBC交響楽団の演奏は素晴らしいものです。残響の少ない8Hスタジオでの録音ですが、それだけに緻密な演奏がわかります。ここも弦楽の美しさがあります。ステージ裏から響くトランペットのファンファーレもきれいです。コーダの厚い響きと勢いのある演奏は素晴らしいものです。さすがにトスカニーニの演奏は凄いものです。


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