1940年代の演奏

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック(1941)

LP(CBS SONY SOCF133)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:09/10:50/13:22
   (リピート無し:原典版)
CD(M&A CD-1137)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  6:05/10:50/5:22/7:53
   (リピート無し:原典版)

  ブルーノ・ワルター指揮
    ニューヨーク・フィルハーモニック
    録音 1941年12月15日

  このレコードはナチスから逃れたワルターがウィーンを経て1939年にアメリカに渡ってからの録音でした。ワルターの運命はこれが2度目の録音で、同じ年にニューヨーク・フィルと「英雄」も録音しています。このレコードは友人に譲ってしまいました。CDの音はクリアでLP復刻は問題になりません。

 交響曲第5番第1楽章はワルターの演奏としては冒頭のテーマのフェルマータは短いほうです。復刻のせいか音は良くありませんが、聞えてくるのは抜群のアンサンブルです。ホルンのファンファーレもよく響いています。展開部も見事ですが、231、232の2小節を2倍に伸ばしています。ここは後の録音でも同じ技をみせています。なおファゴットのファンファーレはそのままファゴットに吹かせています。またワルター独特の解釈、423小節と425小節のヴァイオリンのsfのフレーズの強調はここでもやっていました。コーダ最後のフェルマータでもしっかり間をとっていました。
 第2楽章はたっぷりと歌わせるのですが、音がかすれて聴きにくいので困りました。しかし聞えるのはまぎれもなくワルターの音楽でした。木管の四重奏のところにノイズが何度も入りました。レコードが手元にないのでテープ録音の時に入ったのか、原盤に入っているのか確認はできません。さて157小節目が問題です。ここは弦楽器が1小節早く演奏しているため158小節は弦楽器の159小節になっており、つまるところ1小節少ない演奏になっていました。(1937年のフルトヴェングラーは1小節長い録音でした)最後に第5変奏のところでオーボエの装飾音をゆったりと吹かせているのは印象的でした。
 第3楽章はワルター独特の解釈で13小節目の低弦の強調が極端です。トリオのフーガは熱気を感じるほどの凄まじさがありました。フィナーレまでの緊張感は素晴らしいものがあります。
 フィナーレは速めのテンポですが熱気みなぎる演奏です。なぜか胸の高鳴りを感じました。ホルンの主題もよく響いています。展開部のアッチェルランドもびっくりです。(どうもトスカニーニを意識しているような気がします)第3楽章の回想で抑えて、また再現部で大暴れといった雰囲気でした。コーダにかけてのアッチェルランドはフルトヴェングラー張りです。プレストへのアッチェルランドはそのままプレストへ突入でした。最後のフェルマータは短めです。
 このフィナーレは2度聴いて、なおも興奮させられました。田園とはまったく違うワルターに驚きを隠し得ません。


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