1940年代の演奏

ウィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1943)









CD1(オーパス蔵 OPK-7001)8:06/11:00/5:57/8:04
CD2(DGG 427 775-2)8:04/10:54/5:56/8:04
CD3(DGG POCG9484)8:04/10:54/5:56/8:04
CD4(TAHRA FURT1034/39)8:08/11:08/6:01/8:10
CD5(Berlin phil BPH0604)8:05/11:02/5:58/8:06
CD6(IMG Artists5628752)8:05/10:59/5:57/8:03
CD7(Melodiya MEL CD10 01110)
                8:00/10:51/5:53/8:01
CD8(TAHRA FURT1032/33)8:08/11:08/6:01/8:10
CD9(VIRTUOSO 00001)8:00/10:51/5:54/8:01
LP(コロンビア DXM-157-VX)8:18/10:51/5:52/8:06
テープ(NHKFM1989年放送) 8:05/10:55/5:56/8:03

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
 (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1943年6月30日  フィルハーモニーホール

 この録音は戦時中のものであり、ソ連軍がベルリンの放送局から大量に持ち出したテープの中にあったものです。60年代にソ連のメロディアから発売されたベートーヴェンの中の1枚です。
 1989年にソ連からベルリンの放送局にテープが返還されましたので、NHKではFMで3月と8月にこれを「幻の実況録音テープ」として放送しました。私は両方の放送とも録音しましたが8月の再放送で良い音質で残すことができました。CD1は60年代のメロディア盤LPからの最良の復刻です。CD2は1989年の復刻ですが、恐らく返還されたテープからと思います。テープとほぼ同じ音です。LPは1972年の発売です。これは放送かLPからの復刻でしょう。音質はよくありません。オーパス盤は音質が良く、深みのある音です。ただし、ホールの残響はテープの方がきれいに響いていました。CD4、CD5も良い音質です。CD6はデータが1944年2月7日となっていますが、復刻の違いで音質が落ちているだけでした。CD7は2006年発売のCDです。冒頭クレッシェンドで出てきます。データは1943年6月27日となっていますが同一音源です。CD8はCD4と同一ソースです。CD9はクロアチアのCDですがCD7とほぼ同じソースと思います。

 交響曲第5番の第1楽章はやや速めのテンポで演奏しています。テーマの強調はホルンのファンファーレも同じです。提示部はとてもきれいな演奏です。フィルハーモニーの響きがこんなにきれいとは驚きました。展開部のよどみない流れるような演奏は素晴らしいです。再現部も見事です。実に感動的な第1楽章です。コーダ最後のフェルマータのあとの間がたまりません。
 第2楽章はゆったりと歌って聞きほれてしまうほどです。なんと言って良いかわからないような、天国的響きが聞こえてきます。とても同じ曲とは思えません。第2変奏の奥深い響きはとても他では聞けないと思いました。木管四重奏はまさに絶品です。こんなに凄い演奏だったとは驚きです。
 第3楽章は遅いテンポながらも見事な響きを出しています。ホルンも抜群です。トリオのフーガの美しさは信じられないほどです。これがフーガなんですよね。終結部のピツィカートがきれいでした。
 怒涛のフィナーレはさすが重厚な響きです。これが第5の響きです。展開部でも棒さばきのうまさが冴えます。第3楽章の回想も美しくそして味のある演奏です。再現部からのテンポアップは凄いものがあります。鳥肌が立ってきました。プレストはとんでもないスピードです。こんな演奏をしていたとは凄いというかまさに壮絶無比です。最後にテンポを落としてくるのは同じです。
 この録音は戦時中とはいえ命がけともいえる超名演です。迫力と美しさは比類のないものです。戦後の演奏よりも心に訴えるものは強く、さすがの私も1989年のテープを聞いて感動しました。72年のLPを聴いた時の印象など吹っ飛んでしまいました。はっきりいって1947年5月27日の演奏よりもこちらは名演だと思います。


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