1930年代の演奏

レオポルド・ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団(1931)
LP(ストコフスキー協会 LS13)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  6:25/11:24/5:40/8:13
  (リピート無し:ストコフスキー版)

 レオポルド・ストコフスキー指揮
  フィラデルフィア管弦楽団
  録音 1931年11月21&30日

 ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」はストコフスキー初めてのSP録音です。クラシックを広めた彼の演奏はこの曲を深く印象付けるために冒頭の主題を「ザンザンザンザーン」とゆったり演奏しています。ヴァイオリンの主題からはテンポアップしています。大変劇的な表現です。録音のよさも抜群でしょう。再現部のファンファーレはホルンです。コーダの最後にズザン、ズザンと鳴らすのが印象的です。
 第2楽章の演奏も素晴らしく、低弦がよく響いているのはマルチ録音のためでしょう。弦楽器の厚み、歌わせ方のうまさは凄いです。大袈裟すぎるくらいがSP録音では良かったのです。ティンパニもよく聞こえています。第3変奏の木管は8分音符を短く切っています。コーダの表情豊かな演奏も聞きものです。
 第3楽章冒頭のゆったりとしかもリタルダンド、フェルマータのあとの明るいホルンと流れるような演奏は印象的です。フーガはアウフタクトの8分音符を強調していました。トリオの中間部の低弦も表情豊かです。
 第4楽章の厚みのある演奏は特徴的で低弦のフレーズの強調が面白いです。これは「目からうろこ」です。展開部も素晴らしいとしかいいようのない見事さです。怒涛の再現部も見事です。ほとんどテンポの変化はありません。オーケストラを十分に鳴らしきっています。これまで細部がわかるような録音には脱帽です。息をつくひまもないコーダは凄いです。最後にティンパニの一打が入ります。

 80年近い昔の録音ながらも大きな感動を与えてくれる名演です。ストコフスキーの魔術的な音作りには頭が下がります。


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