2000年代の演奏

デイヴィッド・ポルセリン/タスマニア交響楽団(フォルテピアノ追加版)

CD(ABC 461 916−2)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」 
   6:47/7:45/4:32/11:10
 (第1楽章、第4楽章リピート:新ベーレンライター版)

  デイヴィッド・ポルセリン指揮
   タスマニア交響楽団
  録音 2000年4月3&4日

 デイヴィッド・ポルセリンの演奏は1999年のベーレンライター版を使用していますが、なんと通奏低音として「フォルテピアノ」を加えています。主に左手で演奏しているようです。オーケストラはモダン楽器です。
 交響曲第5番の第1楽章冒頭から古楽器風の演奏ですが、大型チェンバロのようなフォルテピアノが完全にこの曲のイメージを変えたというよりも壊しているといっても良いほどでしょう。逆にこれだけ印象づけた運命もないでしょう。ピアノ協奏曲のような響きの運命になりました。展開部でもフォルテピアノが鳴りすぎて目立ちます。その中でオーボエのカデンツァの深遠な響きがなんともいえません。ホールの残響は豊かです。
 第2楽章は主題のバックに響くピアノフォルテのアルペッジョが効果的です。それにしてもテンポが速いです。第2変奏のアルペッジョは凄いです。これは運命か?と我を忘れそうです。勿論木管の第3変奏でも同様です。
 第3楽章も序奏でアルペッジョが響きます。これほど面白い演奏は初めてです。テンポが速いのでフーガは大変です。経過部ではフェルマータにアルペッジョが入ります。
 第4楽章は47名という小編成のオーケストラだけに厚みのある響きではありませんが管楽器ががんばっています。フォルテピアノは経過部で聞こえています。展開部で音に厚みを加えるためにはフォルテピアノは有効でした。再現部では管楽器の響きが随所に光っています。コーダもかなりユニークは響きが聞こえます。これは面白い演奏です。
 衝撃的なフォルテピアノを追加した演奏でした。あっけにとられます。こんな演奏も出来るというポルセリンのねらいが当たっているかどうかはこれからわかってくるでしょう。なにしろ他の曲でも同様にフォルテピアノを追加しているのです。第6番「田園」も面白いです。


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