1960〜1979年の演奏


ウィリアム・スタインバーグ/ピッツバーグ交響楽団 


LP(COMMAND GT−1001)ステレオ
CD1(St Lauren Stadio YS33-2403/2407-2)全集
CD2(DGG 483 8344)全集

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:11/9:26/5:00/11:18
  (第1楽章、第4楽章リピート:ワインガルトナー版)

  ウィリアム・スタインバーグ指揮
   ピッツバーグ交響楽団
   録音 1965年6月7〜9日

 1971年に発売された1000円盤LPの中の1枚です。1000円盤ではクリュイタンスと並ぶ名盤でした。なおこの時はこのコマンドレーベルはキングレコードからの発売でした。スタインバーグはピッツバーグ交響楽団と全集を録音しています。また楽譜通りにリピートしていて、第7番も第1楽章の提示部をリピートしていました。CD1は2014年にCD化の全集です。CD2は2020年にドイツ・グラモフォンから発売された全集です。
 交響曲第5番の第1楽章は速いテンポです。運命のテーマも速く、そしてフェルマータの後に間をおかない息をもつかせない演奏です。ホールの響きは大変良く残響も理想的です。ホルンがよく響いてくれます。展開部も緊張感ただよう演奏で、スタインバーグの音作りは素晴らしいものです。オーケストラの音が溶け合ってカラヤンの響きのようでした。オーボエのカデンツァはフェルマータからスラーで入るのではなく、フェルマータで切ってカデンツァに入りました。これはドラティもやりますが、ドラティのように一呼吸入れるのではなく続けて演奏しています。(スコアではカデンツァをアダージョでスラーの指示となっていますが、フェルマータの2分音符にはスラーはまたがっていませんから慣例的にスラーで演奏しているのは面白いことです。)原典版のようでありながら再現部のファゴットのファンファーレにはホルンを重ねています。コーダでも運命のテーマの強調することなしに一気に終わります。
 第2楽章は大変きれいな演奏です。ホールの響きが良いので管も弦も美しく響いてきます。特にフルートの美しさが際立っていました。さわやかな第2楽章でした。第3楽章もホルンがよく響いてきれいです。トリオのフーガは実に素晴らしい演奏です。なんの苦もなく弾いているように聞えます。いいオーケストラです。
 第4楽章はハ長調の響きがとても生き生きしています。提示部のホルンのテーマが喜びに満ちているように感じました。スタインバーグのベートーヴェンがこんなに良かったとは思いませんでした。もう30年は聴いていませんでしたので驚きです。ベートーヴェンに我を忘れて浸れる演奏は多くありませんが、これは浸れますね。弦楽器のうまさがこのフィナーレでは冴えています。展開部も見事で、再現部からコーダも厚みのある響きが聴かれます。美しい響きの第五でした。


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