1929年までの演奏

フリードリヒ・カーク/グロッセ・オデオン・シュトライヒ・オーケストラ
CD(Wing Disc WCD62)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
    6:31/8:02/4:36/9:38
    (第1楽章リピート:原典版)

 フリードリヒ・カーク指揮
   グロッセ・オデオン・シュトライヒ・オーケストラ
    録音 1910年

 この伝説の録音は21世紀になって日の目を見たのですが、オーケストラ名がシュトライヒ(弦楽器)となってるために、弦楽オーケストラの録音と勘違いされていました。実際には管楽器の音がよく響いています。低音の補強にファゴットを重ねて録音しています。なお、指揮者の名前は不明ですがフリードリヒ・カークという指揮者ではないかと言われているようです。
 音はさすがにアークスティック録音の貧弱な音ですが楽器の音が明瞭に聞こえてきます。これには驚きました。

 交響曲第5番の第1楽章は速いテンポの演奏です。片面約3分という制限があったためかもしれません。弦楽器はポルタメントを多用しており、ちょっと気になりますが、当時は普通だったのでほとんどの録音で聞かれます。ホルンのファンファーレは実にはっきりと聞こえます。再現部のファゴットのファンファーレはそのままファゴットで吹いていました。まだホルンで代用というのは無かったためと思います。コーダへの演奏は見事で一気に終わります。
 第2楽章はまず冒頭でチェロよりもファゴットの音が目立ちます。チェロの補強で吹いてるはずのファゴットが前面に出たようです。全体としてもこれは当時の録音(吹き込み)の仕方の特徴でした。
 第3楽章も管楽器で始まるように聞こえてきます。ホルンのテーマはきれいに響いています。フィナーレは堂々としたものです。演奏の乱れはそれどなく、見事な演奏です。コーダ前にテンポを落としてコーダに突入という技も聞かせます。

 最も古い録音でありながら、それほど古さを感じさせない演奏でした。


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