1929年までの演奏

フランツ・シャルク/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

LP(ATRAS ATRAS1008)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:37/8:40/5:00/8:35
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
CD(EMI新星堂 SGR-8005)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:38/8:41/5:02/8:35
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 フランツ・シャルク指揮
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 1929年10月26〜28日 

 このレコードは冒頭で4つの音をたたく演奏というレッテルが貼られてしまい、そのことばかりが印象付けられてしまいました。しかしどのような指揮をしていたのかわかりませんが、この曲の冒頭はどの指揮者にとっても頭のいたいところだそうですから、オケが乱れることは充分ありえます。クナッパーツブッシュのライブでもそんなことがありました。また練習指揮者と本番の指揮者の違いでオケが戸惑うこともあります。実際に自分が高校の時に同じ経験をしていますので、冒頭で4つの音をたたくというのは珍しいことではないように思います。緊張が緊張を生んでいることは確かです。
 さてこの演奏はウィーン・フィルの初めてのレコード録音です。ムジークフェラインでの録音でした。田園と第8は1928年にやはりシャルクが録音しています。  交響曲第5番の第1楽章はだんだん良くなってきます。ウィーン・フィルの音になってきます。ウィンナホルンの響きも好調です。オーボエカデンツァも愛らしい響きです。コーダ最後の運命の動機は思い切り強調、そしてフェルマータをたっぷり伸ばしていました。
 第2楽章はやや速めのテンポです。ここのウィーン・フィルは完璧です。思わず音の古さを忘れて聞き入ってしまいます。第2変奏の木管の合いの手はまさにムジークフェラインの響きです。ワルターの田園を思い出します。木管四重奏もきれいでした。また第3変奏の木管ですが八分音符をすでにここでは短く演奏しています。スタッカートに近いです。きれいな2楽章でした。
 第3楽章は普通の速さです。リタルダンドも軽めでした。提示部の演奏は完璧です。トリオのフーガの素晴らしさは言うまでもなくこのオーケストラの得意中の得意のようです。フィナーレまでの経過部の絶妙さはたまりません。素晴らしいです。
 フィナーレの音の厚みとオーケストラのアンサンブルの見事なことはとてもこの1929年の演奏とは信じられません。ヴァイオリンのうまさは最高です。展開部も申し分なしです。第3楽章の回想は大変美しいものになっていました。再現部も見事です。コーダになってもその勢いは止まらず見事なフィナーレとなっています。
 全曲を聴きますと、いかに当時のウィーン・フィルが優秀だったかがわかります。冒頭のずれは目をつぶってこの名演に耳を傾けたらどうでしょうか。
 ところでCDは新星堂の復刻を聴きました。LPは70年代にカッコウというレコード屋さんがプライヴェートで復刻したものを聴きました。広域はかなりカットしていますが低音はよく響いていました。LP復刻はキャニオンから発売されていましたがそれは購入していませんでした。


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