1930年代の演奏

セルゲイ・クーセヴィツキー/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1934)
CD(IMG 7243 5 75118 2 7)2枚組
 
CD1
1.チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調Op64
2.ラフマニノフ/交響詩「死の島」Op29
3.リスト/メフィスト・ワルツ第1番
CD2
4.シベリウス/交響曲第7番ハ長調Op105
5.ロイ・ハリス/交響曲第3番
6.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」 
    7:57/10:40/5:35/8:51
    (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

  セルゲイ・クーセヴィツキー指揮
   ボストン交響楽団(1〜3&5)
   BBC交響楽団(4)
   ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(6)
   録音 1944年11月22日(1)
       1945年4月23日(2)
       1936年5月8日(3)
       1933年5月1日ライヴ(4)
       1939年11月8日(5)
       1934年9月3&4日(6)
          (モノラル録音)

 ボストン交響楽団の黄金時代を築いたクーセヴィツキーの名演集です。クーセヴィツキーはラヴェルに「展覧会の絵」の編曲を委嘱したりバルトークに「管弦楽のための協奏曲」を委嘱したことで知られています。
 チャイコフスキーの交響曲第5番は1944年の録音、第1楽章は提示部に入ってからの勢いのある演奏は凄いです。時にはテンポを変えながら進みます。第2楽章のホルン・ソロは暖かい響きの見事な演奏です。フィナーレも迫力十分。
 ラフマニノフの「死の島」は1909年の作品、暗い印象を受けますがラフマニノフの管弦楽作品の名作です。リストのメフィスト・ワルツ第1番はSP録音では珍しいかもしれません。こちらは見事なアンサンブルで弦楽のうまさが際立っています。
 シベリウスの7番はイギリスのBBC交響楽団を指揮したライヴ録音です。この作品は1924年の作曲ですが、録音はこのクーセヴィツキーが最も古いものです。イギリスのオーケストラがシベリウスの交響曲を演奏するきっかけになっていたかもしれません。今聴いても透明感のある奥深い響きの演奏です。
 ハリスの交響曲第3番は1939年2月24日にクーセヴィツキーがボストン交響楽団を指揮して初演した曲です。これが初録音でしょう。
 ベートーヴェンの交響曲第5番はロンドン・フィルを指揮した演奏です。1934年のSP録音ですが、録音状態は他の録音と比べるとあまりよくありません。しかしながらクーセヴィツキーの貴重な「運命」として忘れることはできません。ロンドン・フィルは1933年にもワインガルトナーと「運命」をEMIに録音していました。クーセヴィツキーの演奏は重厚な響きの第1楽章が見事です。提示部の第2主題に若干ポルタメントをかけるところがこの時代の演奏らしいところです。リピートの演奏のほうが音質はきれいです。展開部は勢いがあり緊張感のある演奏です。再現部のファゴットのファンファーレにはホルンを重ねています。コーダの運命の主題はテンポの変化はありませんがフェルマータは長いです。
 第2楽章は程よいテンポで主題を歌いますが、木管の経過部分では表情付けが絶妙です。ドルチェの指定を大切にしています。第1変奏でも経過部の表情付けがあります。木管四重奏の演奏はゆったりときれいに演奏していました。コーダで急にテンポアップするところがあって驚きました。第3楽章はやや遅めのテンポでホルンの主題もゆったりと大きな音量で演奏されます。フーガは弦楽の厚い響きが見事でした。フィナーレは遅めのテンポで重厚な響きを出しており、ホルンと木管の主題も厚みがあります。展開部の流麗な演奏、フルートの美しい響き、トロンボーンの強奏も素晴らしい。第3楽章の回想から再現部への流れもよく、コーダの和音、ホルンの主題からピッコロの上昇フレーズの明るさが聴きもの。プレストから終結は金管の厚みのある演奏がありますが最後のフェルマータはやや短いものでした。


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