1930年代の演奏

ウィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1937)





CD1(オーパス蔵 OPK-2037)7:27/9:59/5:42/7:58
CD2(EMI TOCE-3727)7:30/10:04/5:41/8:00
CD3(Biddulph WHL006-7)7:34/10:09/5:49/8:06
CD4(TAHRA FURT1032/33)7:36/10:12/5:49/8:07
CD5(HISTRY 203095-302)7:31/10:06/5:22/8:05
LP(東芝EMI WF-70022)  7:30/10:05/13:45

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1937年10月8日&11月3日

 この録音はフルトヴェングラー2度目のスタジオ録音でした。SP録音ですから予定の小節でストップ、そして次の小節からまた録音するのですが、この録音はどうしたことか第2楽章のつなぎ目で面白いことになっています。それは157小節の管楽器と低弦のディミヌエンドにヴァイオリンとヴィオラの上昇音が重なりますが、なぜかこの録音ではディミヌエンドでテイクを終了、次のテイクをなんと157小節のヴァイオリンとヴィオラのフレーズから録音したものですから、1小節長い演奏ができてしまいました。
 日本盤のCD2とLPでは1小節長い収録にしていますが、CD1とCD3&5ではこのヴァイオリンとヴィオラの最初のフレーズをカットして収録しています。ですから聞えるはずの音が聞えないというだけで普通に流れています。しかし日本盤はこの貴重な音をカットせずに収録していたわけです。CD4のTAHRA盤は1998年のリマスターでこれを見事にカットなしで修正していました。
 もうひとつ、これは収録のミスですがCD5の廉価盤では第3楽章の324〜351小節がカットされています。そのため20秒短くなっています。100円CDでも全く同じカットがありました。

 交響曲第5番の演奏ですが第1楽章冒頭はフルトヴェングラーとしては速いテンポで始まります。フェルマータは長めで重厚な響きを出していました。提示部の第2主題からの盛り上げは見事です。展開部のpが相変わらず美しいです。再現部からコーダも見事、コーダ最後の運命の動機はテンポを落として強調しています。
 第2楽章は豊かな響きが聞かれ、弦の美しさがなんとも言えません。第2変奏はクライマックスが聴き所です。音量も豊かでした。157小節はCDによって異なります。
 第3楽章はppのあとのホルンが力強く響きます。トリオのフーガはさすがに見事なアンサンブルを聴かせてくれます。第4楽章は明るく堂々と歌っています。第3楽章の回想は緊張感があります。再現部からコーダは音の渦でした。そしてプレストにかけてのスピード感は壮絶です。一気に終わりますが最後のフェルマータは短めです。この演奏はフルトヴェングラーの演奏の中では異例の速さで、テンポの変化の少ないものでした。

 なお、オーパス蔵の復刻は予想どおりの抜群の音質で聴かれます。この中では最も良い音質というだけでなくフルトヴェングラーの演奏の緻密さが聞こえてきます。37年盤はオーパス蔵盤を聴くことにより本来の姿が見えてきます。


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