2000年代の演奏

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団(2000.5.10)
CD(EXTON OVCL−00021)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   8:32/10:02/5:32/11:18
   (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)

 朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団
   録音 2000年5月10日 
   大阪・ザ・シンフォニー・ホール・ライヴ 

 これは朝比奈隆のベートーヴェン交響曲、7度目最後の全集となったライヴの1枚です。CDには5月3日の福岡と5月10日の大阪での演奏が収録されています。演奏時間は5月3日が36分27秒、5月10日は35分24秒と1分3秒の違いがあります。
   交響曲第5番の第1楽章は3日よりも若干テンポが速いです。リズムにのった生き生きした音楽になっています。冒頭の緊張感はこちらの方が上でしょう。ホルンのファンファーレは大人しいです。展開部のテンポはとても心地よいものです。十分に厚い響きを堪能できます。木管とホルンの掛け合いが絶妙でした。なお、オーボエのカデンツァでフェルマータのあとに一息入れています。5月3日の時はスラーで一気に吹いていました。再現部は見事なアンサンブルをきかせます。ティンパニは力むことなく良い響きです。コーダの主題の強調は見事でした。
 第2楽章は3日とほぼ同じテンポです。淡々とした演奏に聞こえますが、よどみのない演奏は大変バランスの良いものです。第2変奏の熱い響きはさすがに素晴らしいです。木管四重奏はまずまずでしょう。第3変奏のあとのクライマックスは厚みのある響きでした。
 第3楽章は冒頭の程良いリタルダンドとホルンの強奏が素晴らしいです。テンポは少し速めです。トリオのフーガが素晴らしいアンサンブルです。経過部のフルートがきれいです。
 第4楽章は直前のクレッシェンドから圧倒されます。ホルンと木管のファンファーレも素晴らしい響きです。提示部リピート後の冒頭のトランペットが見事な強奏でした。力の入る演奏です。展開部の木管は生き生きしています。そこからの全合奏の響きはたまりません。第3楽章の回帰ではオーボエが絶妙の響きです。再現部は流れるような音楽の洪水となっています。コーダの和音も素晴らしく、ホルンの主題も流麗です。なんとも素晴らしい響きの連続です。プレストからが凄いです。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みが明瞭に聞こえます。最後の和音ではフェルマータの直前の間とティンパニにの2度のトリル、そして最後の一打という離れ業が聴衆を興奮のるつぼとさせていました。「感動」でした。
 5月3日とまったく違う演奏を大阪のファンは聴いたのでした。完成度の高さと、緊張感はこちらが上でしょう。朝比奈最晩年にして、最高傑作となったかもしれません。


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