2000年代の演奏

沼尻 竜典/トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズ(2000)
CD(EXTON OVCL−00025)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:33/10:19/5:39/8:49
  (第1楽章リピート:ベーレンライター版)

 沼尻 竜典/トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズ
   録音 2000年7月6&7日 
       三鷹市芸術文化センター 

 この演奏はベーレンライター版による室内楽団の演奏です。モダン楽器の団体ですので響きは小規模オーケストラの特徴がよく出ています。管楽器と弦楽器のバランスが大変よく、18世紀の音楽を演奏するには一番でしょう。
 交響曲第5番の第1楽章は速すぎず、とても良い響きです。ベーレンライター版の演奏としては少し遅いくらいです。提示部の演奏は素晴らしく、ホルンのファンファーレが生き生きしています。展開部は均整のとれたアンサンブルが気持ちよく聞こえます。再現部は管楽器の響きが良く、ティンパニは押さえの聞いたもので目立つことはありませんでした。きれいな1楽章でした。
 第2楽章は室内楽団ならではのバランスの良い演奏です。特に弦の内声部が明瞭に聞こえてきます。木管の美しい響きはなんともいえません。全合奏のところは管楽器の響きが大きくなりますがこれがいいところでしょう。第2変奏のあとの木管四重奏はホールに大変良く響いてきれいでした。テンポはじっくり聞かせるものでこの楽章の魅力を出し切っています。
 第3楽章はやや遅めのテンポで始まります。ホルンのテーマは明るく良い響きです。フーガはとても良いアンサンブルです。経過部のヴィオラの装飾音は明瞭に聞こえます。このヴィオラはなかなか聞こえてきませんが、演奏は大変なところです。
 第4楽章は金管が張り切ってくれます。弦が少ないだけに管楽器の出番となりましょう。展開部に入ってからの木管の響きはきれいです。第3楽章の回帰はオーボエの聞き所です。再現部は提示部ほどの大音量ではありませんが十分な響きを出しています。コーダのホルンの主題は大変きれいです。プレストからは和音の連続まで整然としてすっきりとした演奏です。
 この演奏は第1楽章のリピートだけで32分20秒かけています。ホールの響きの良さを生かした見事な演奏で、オーケストラの水準の高さが世界のレベルということがわかります。


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