2000年代の演奏

飯守 泰次郎/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(2000)
CD(fontec FOCD9160/4)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:49/9:11/7:34/10:10
  (第1楽章、第3楽章、第4楽章リピート:
           ベーレンライター版)

  飯守 泰次郎指揮
   東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
   録音 2000年7月27日 
       東京文化会館大ホール・ライヴ

 この演奏はベーレンライター版による日本のオーケストラによる初めての全集でした。飯守による深く掘り下げたスコアの読みが個性的な演奏を生みました。
 交響曲第5番の第1楽章冒頭から古楽器奏法による独特の響きに耳を奪われます。また大変速いテンポです。ホルンのファンファーレは見事な強奏でした。展開部が面白く180、181小節のヴァイオリンはsfを2分音符というよりも4分音符のような短さです。アクセントを強調するもので大変印象に残ります。またオーボエのカデンツァに装飾音を入れています。再現部はあっという間に終わりました。運命というイメージは全くありません。
 第2楽章はやや速いテンポで主題を歌っています。またアクセント、スタッカートを強調したところも特徴的です。第2変奏のあとで木管四重奏が歌うところはきれいでした。木管の第3変奏で8分音符を短く切るのは極端なくらいにやっています。なかなか面白い演奏です。
 第3楽章は速いテンポです。リピートですが、235小節から2小節に戻りますのでおやっと思います。トリオのフーガは大変なスピードでした。凄いです。(なお、リピートですが、235小節の終わりに二重線がありますので、ここからのリピートが正しいのかもしれません。ギュルケ版は次の236小節から2小節に戻っています。アバドも同じでした)
 第4楽章はやや速めのテンポでぐいぐい引っ張ります。分厚い響きの演奏です。提示部のリピートがないとあっという間に展開部にはいってしまうようです。再現部は大変豊かな響きになっています。コーダはホルンの主題のあとでピッコロがよく響いています。プレストからの全合奏は見事でした。
  大変面白い演奏といえます。随所にうならせるところがあります。ベーレンライター版のひとつの手本として記憶に留めたい演奏です。田園もまたユニークです。


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