1950年代の演奏

ウィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1954-2)


CD1(TAHRA FURT1008-1009) 
   8:16/11:03/6:08/8:36
CD2(TAHRA FURT1032-1033) 
   8:23/11:12/6:13/8:43
CD3(VIRTUOSO 2697192 FV3004 )
    8:04/10:47/5:59/8:25

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1954年5月23日 
  ベルリン ティタニア・パラスト・ライヴ

 これはフルトヴェングラー最後の運命でした。私はLPは入手していませんでしたので、CDで初めて聞きました。CD3でこの録音を知りましたが、これは正規盤ではなくスーパーで販売されたものです。またCD3はピッチが高く残響もきれいではありません。TAHRA 盤は遙かにきれいで、残響も見事に聞こえます。CD1は1994年のリマスター、CD2は1998年のリマスターです。CD2はピッチの調整で演奏時間が長くなっていますが、こちらが本来のピッチです。

 交響曲第5番の演奏は晩年のフルトヴェングラーだけに穏やかな雰囲気が漂い40年代の演奏とは印象が違います。
 第1楽章はすっきりとした演奏で、冒頭はたっぷりと伸ばしています。ホルンは強奏で音を割っていました。展開部は緻密で良い響きを出しておりここはさすがです。コーダではたっぷりとテーマを強調、そのあとの間は短めにとっていました。
 第2楽章は大変きれいな弦の響きが印象的で、続くニコレのフルートの美しい響きがたまらないです。ここで凄いのはピアニシモとフォルティシモの音量の差でしょう。第2変奏の掛け合いは静かすぎて耳を澄ませるようでした。木管四重奏はそれは天国的な美しさでした。この第2楽章は美しい演奏です。驚きました。
 第3楽章は穏やかな序奏とつづくホルンの強奏の対比が見事でした。フーガの演奏はいうまでもなく弦の聞かせどころです。続く経過部でもニコレのフルートはよく響いていました。
 フィナーレは重厚で豊かな響きで始まります。ホルンの主題がとても印象的でした。展開部では各楽器が明瞭に聞こえています。第3楽章の回帰では最弱奏の中にオーボエが美しい響きを出していました。再現部は明るく開放的な曲調そのままで、コーダのホルンの主題もピッコロも美しい響きでした。プレストのスピードと和音で若干テンポを落とすのは同じですが、テンポの落とし方は極端ではなく新たな発見があります。最後のフェルマータの前では少し間をおきました。

 燃える演奏とはいえませんが、これは素晴らしい演奏です。54年のウィーン・フィル盤に近いでしょう。


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