1950年代の演奏

エーリヒ・クライバー/北西ドイツ放送交響楽団(1955)
CD(TAHRA TAH581-583)3枚組 

エーリヒ・クライバーを悼んで
CD1
1.クライバーの音声記録
2.モーツァルト/交響曲第36番ハ長調「リンツ」
      〜第1楽章&第2楽章
3.ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調Op60
CD2
4.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
        (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
5.    〃   /交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
CD3
6.ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調Op104
7.リスト/交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」

  アントニオ・ヤニグロ(チェロ)(6)
  エーリヒ・クライバー指揮
   北西ドイツ放送交響楽団(2&4)
   アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(3)
   ケルン放送交響楽団(5&6)
   チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(7)
  録音 1955年3月11日ライヴ(2&4)
      1950年4月28日ライヴ(3)
      1955年4月4日(5)
      1955年3月28日(6)
      1936年6月22日(7)
      (以上モノラル)

 エーリヒ・クライバーは1956年に亡くなっています。SP時代にはテレフンケンに録音がいくつもありました。ベートーヴェンの交響曲もたくさん録音しました。このアルバムにはベートーヴェンの4番、5番、6番が収録さてています。またヤニグロのソロでドヴォルザークのチェロ協奏曲が収録されていますので。これも貴重な録音です。北西ドイツ放送(現:北ドイツ放送)のライヴは他では入手できない音源です。リストの「前奏曲」はテレフンケンのスタジオ録音です。
 モーツァルトの交響曲第36番「リンツ」は第1楽章と第2楽章のみの収録です。ベートーヴェンの交響曲第4番はスタジオ録音がありませんのでこのライヴは貴重な演奏です。
 交響曲第5番「運命」は速いテンポの演奏です。第1楽章の運命の主題はフェルマータのあとに切れ目なく続くもので息つく暇もない気迫に満ちた演奏です。展開部も同様です。音に切れ目がありません。オーボエのカデンツァから引き続き主題が流れます。再現部のファンファーレはファゴットにホルンを重ねて演奏しています。第2楽章はやや速めのアンダンテ・コン・モトです。主題の歌わせ方はきれいです。第2変奏の流麗な演奏は素晴らしい。第3楽章の序奏はたっぷりのリタルダンドです。ホルンの主題は素晴しい響きです。フーガの凄まじい演奏は驚きです。フィナーレはやや遅めのテンポで入ります。重厚な響きがたまりません。テヌート、レガートを駆使して演奏しています。展開部の抑えの利いた演奏、そして盛り上がりのうまさはクライバーの魔術でしょうか。第3楽章の回想もあっという間で再現部の厚い響きに埋もれそうです。コーダのホルンの主題とピッコロの強調が聞き所です。プレストからの息をもつかせぬ演奏は凄いです。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みもはっきり聞こえていました。最後のフェルマータではティンパニが2度打ちしています。
 交響曲第6番「田園」は表情豊かな冒頭から素晴らしく、コンセルトヘボウの演奏同様大変きれいな響きです。第2楽章の表情豊かな歌はたまりません。第3楽章のオーボエ、クラリネット、ホルンのソロもきれいです。第4楽章の凄まじい「嵐」は凄いです。我を忘れてしまうほどの音量です。コーダの遠雷、太陽のきらめきも見事です。フィナーレの牧人の歌がゆったりと表情豊かに歌われるのはたまりません。 
 ドヴォルザークのチェロ協奏曲は放送録音の状態が大変よく音質はきれいです。ヤニグロはイタリア生まれの名チェリストです。この録音は貴重な録音です。その鮮やかな演奏には聞きほれます。
 リストの交響詩「前奏曲」はテレフンケンのSP録音です。大変優秀な録音で冒頭からきれいな響きがあります。とても70年以上前の録音とは思えません。弦楽器の音色が大変きれいです。ホルンもまた同様で、嵐のあとハープのあとに演奏されるホルンも素晴らしい響きです。


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