1950年代の演奏

オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(1955)
CD(CDM 7 63868 2)モノラル

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  7:58/10:00/5:40/11:04
  (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)

 オットー・クレンペラー指揮
   フィルハーモニア管弦楽団
   録音 1955年10月6、7日&12月17日)

 これはクレンペラー3回目の録音でした。キングスウェイホールの録音ですでにステレオ録音の試験が始まっていましたが、同時に録音した7番はモノラルとステレオが存在しますが、なぜか第5はステレオ録音がありません。
 交響曲第5番は第1楽章がやや遅めのテンポで始まりますが、ほど良いテンポでした。クレンペラーはフェルマータのあとにほとんど間をおかずに演奏しています。ホルンのファンファーレはブレインらの力強い音が響いています。提示部を聞きますと、テンポは違いますが、カラヤンに鍛えられたフィルハーモニアの音が聞こえます。展開部もご機嫌です。違うのは再現部のファゴットのファンファーレをそのままファゴットに吹かせていることです。またホルンを抑えているのもカラヤンとの違いです。しかし響きとしては文句のつけどころはありません。コーダ最後の運命のテーマも強調することなく演奏していました。
 第2楽章は普通のテンポで主題を歌っています。第1変奏からは木管特にフルートがきれいです。第2変奏からも良い響きが聞かれ、木管の合いの手そして続く強奏は見事です。木管四重奏はこのオーケストラの聞きどころです。第3変奏の木管の8分音符は伸ばしています。この2楽章は思いのほか渋いですね。
 第3楽章は冒頭そこそこのリタルダンドのあとにホルンの力強いテーマが演奏されますが、つづく27小節からテンポを落としています。まるでホルンが速すぎたかのような落とし方です。しかもホルンがほとんど聞こえません。こんなことはありえないはずですが、なにかトラブルがあったのかもしれないと思いたくなります。トリオのフーガは見事なアンサンブルを聞かせています。後半の弱奏部分はきれいに推移していますが324小節からのティンパニがやや強めに叩いているのが気になりました。
 フィナーレは重厚な響きを出しています。金管もよく鳴らしています。提示部のリピートではホルンの主題も朗々と響いていました。展開部は熱い演奏を聞かせていますし、第3楽章の回想も良い雰囲気を出しています。再現部からコーダもそつなくまとめていますが、ホルンの主題のあとのピッコロが大きく鳴っています。プレストは圧倒的な演奏です。最後のフェルマータはたっぷり伸ばしていました。
 それにしても第1第2楽章で聞かれたブレインのホルンが第3楽章の27小節から聞かれなくなっていました。不可解なことです。なにかあったとしか思えないです。


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