2000年代の演奏

シルヴァン・カンブルラン/南西ドイツ放送交響楽団(2003)
CD(Glor GC11461)

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命
     (第1楽章&第4楽章リピート:原典版)
2.    〃   /交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」

  シルヴァン・カンブルラン指揮
   南西ドイツ放送交響楽団
   録音 2003年11月29日(1)
       2007年1月23&24日(2)

 カンブルランのベートーヴェンです。「田園」は「運命」から3年以上過ぎてからの録音です。
 交響曲第5番「運命」は程よいテンポの第1楽章はフェルマータのあとに間をおいています。オーケストラの響きは緻密で緊張感があります。ホルンのファンファーレは力強く響き渡ります。気分爽快です。展開部冒頭のホルンの響きも素晴らしい。そして弦楽と管楽器の対話では強弱をしっかりつけています。オーボエのカデンツァはアダージョで感動的かつきれいな演奏です。再現部のファンファーレはファゴットで吹いています。コーダへの経過部の響きは厚みがあります。ティンパニの強打が凄いです。コーダは圧倒的で切れ目なく終結します。第2楽章はやや速めのテンポですが表情豊かに歌う主題がきれいです。また木管が大変きれいに響いています。第1変奏の上に木管が美しい響きを出してくれます。またこの楽章ではドルチェ(甘美に)の指示が多いのでどのように表現するかが聴きものですが、カンブルランの表現力には脱帽です。全合奏の音量は大きいです。木管四重奏は流麗で大変よく響きます。第3変奏の木管は絶品です。第3楽章は序奏で絶妙なリタルダンドとフェルマータ、そしてホルンの主題がきれいです。フーガではテンポ少し落として密度の濃い演奏をしていますので一瞬何が起きたのかとびっくりでした。フィナーレは重厚な響きが圧倒的です。ホルンと木管の主題もきれいです。提示部のリピートがあります。このリピートで響きの違いを出しています。展開部では弦楽のうまさ管楽器の響きが素晴らしい。フルートとファゴットの美音は特筆ものです。第3楽章の回想はテンポが速いので再現部のテンポが若干速くなっているようにも感じます。そのためか一層緊張感のある演奏になっています。コーダの和音の連続、ホルンの主題がきれいです。ピッコロが大変きれいに響いています。プレストからの緊張感は凄まじく息をもつかせぬ圧倒的な演奏です。
 交響曲第6番「田園」は第1楽章のテンポが速いですが主題は表情豊かに演奏しています。冒頭のフェルマータのあとに間を置いています。提示部のリピートがあります。木管の響きがよくホールの残響も素晴らしいです。展開部の同じフレーズの連続は素晴らしく、最後のファゴットの演奏が聴きものです。再現部も流麗な演奏に変わりはありません。微妙なテンポ変化が素晴らしい。コーダのクラリネット、フルートへの流れもきれいです。終結では若干テンポをおとしています。第2楽章「小川のほとりの情景」はやや速めのテンポながら、クラリネットとファゴットの主題が大変きれいです。ヴァイオリンのきらめきもきれいです。それにしてもベートーヴェンの弦楽による流れの表現は素晴らしいものです。フルートとオーボエの歌うところは鳥たちのさえずりのようです。コーダの夜うぐいす、うずら、カッコーの演奏では夕暮れで静かになく鳥のような表現がにくいです。第3楽章はオーボエ、クラリネット、そしてホルンと続く主題の流れは見事です。トリオは厚い響きがあります。第4楽章「嵐と雷雨」ではティンパニの強打が凄いです。叩き方は完璧です。雷鳴らしい音です。豪雨の表現も凄いです。遠雷もうまいです。フィナーレ冒頭のホルンは素晴らしい響きです。深みのある音は印象的です。主題の変奏とその前に入るホルンの分散和音もきれいです。
 カンブルランの演奏は「運命」と「田園」に新しい命を吹き込んだような名演です。


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