1980〜1999年の演奏

宇野 功芳/新星日本交響楽団(1991)
CD(FIREBIRD KICC19)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
 7:51/10:58/6:04/11:26
 (リピート無し:ワインガルトナー版)

 宇野 功芳/新星日本交響楽団
 録音 1991年4月16日 東京芸術劇場ライヴ

 宇野先生のベートーヴェンはどれを聴いてもびっくりするような趣向を凝らした演奏です。評論家であり、ムラヴィンスキーやクナッパーツブッシュ、ワルター、朝比奈隆などを高く評価していますが、ご自分の演奏は誰にも似ていない独自の世界を作っています。テンポが変わり急に遅くしたり、延ばせるだけのばしたり聴くものを興奮させて楽しませてくれる演奏です。他の指揮者なら絶対やりそうもないことをやってくれます。
 交響曲第5番の第1楽章冒頭はフルトヴェングラーのように遅く、それでいてテンポアップせずにすすむのですが、再現部には意表をつく面白さを見せます。1楽章はブーレーズのような遅いテンポのようでもっと面白い演奏です。第2楽章も普通のテンポのようで時に聴き所を作っています。面白いのは最後の2小節です。フェルマータはないのに思いきり延ばして崩れそうに終わるのです。唖然とします。
 第3楽章も遅めのテンポです。テーマは力強く演奏しています。フーガは遅いので勢いはありませんがフーガの美しさがあります。面白いのが第4楽章へのクレッシェンドで、そこにリタルダンドをかけてティンパニのリズムを遅くして一気に4楽章です。ですから4楽章も遅いテンポになります。他の演奏では聴けない演奏を宇野先生はやってくれます。第3楽章の回想でもやっぱり同じリタルダンドをかけて再現部に突入でした。コーダの最後の和音もほかでは聞けません。あれだけ1音1音丁寧に演奏しているのはこの演奏だけです。最後のフェルマータも気を持たせてくれます。いわばやりすぎ、やりたい放題の演奏といえます。しかしながら、演奏者も聴いてるお客さんも楽しめる演奏を目的としていた宇野先生の思惑が一致した演奏でしょう。


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