1950年代の演奏

フェリックス・プロハスカ/ウィーン国立歌劇場管弦楽団(1958)
CD(VANGUARD 08 6165 71)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   5:58/10:06/5:14/8:16
   (リピート無し:ワインガルトナー版)

 フェリックス・プロハスカ指揮
  ウィーン国立歌劇場管弦楽団
     録音1958年

 フェリックス・プロハスカは1912年ウィーンに生まれ1991年に亡くなっています。1946年から1955年までの10年間と1964年から1967年の3年間ウィーン・フォルクスオパーの指揮者をしていました。ウィーン国立歌劇場管弦楽団(ウィーン・フィルの母体)とは運命、未完成、モーツァルトの40&41番などを録音していました。
 交響曲第5番「運命」はウィーンの伝統的な響きを継承した実に見事な演奏です。第1楽章はリピート無しですが提示部1分32秒をリピートしたとすれば7分30秒になります。この程良いテンポは運命を最も響かせるものでしょう。ウィンナホルンの響きがたまりません。ウィンナオーボエのカデンツァもチャーミングです。再現部のファンファーレはファゴットにホルンを重ねて演奏しています。コーダのテーマの強調、長めのフェルマータなどこの時代の流行でした。
 第2楽章のチェロとヴィオラの主題は流麗でこの楽章の美しさを改めて感じます。第1変奏、第2変奏と同じチェロとヴィオラで演奏するところはこの曲の秘められた特徴でもあります。クライマックスでティンパニの強打は見事でした。第3変奏の木管で8分音符を短く演奏するところはウィーン・フィル伝統のものです。第3楽章は序奏のあとで響くウィンナホルンのテーマが力強いです。フーガは素晴らしいアンサンブルです。
 第4楽章冒頭は全合奏のバランスが大変良くこの曲の響きを見事に出しています。展開部の管楽器の演奏もきれいです。盛り上がりも抜群です。第3楽章の回帰はオーボエが大変きれいです。再現部の主題は管楽器のレガートが優美でここは驚きました。経過部のティンパニも素晴らしいです。コーダのホルンの主題も甘い響きがきれいです。プレストに入ると和音の連続に圧倒されます。最後のフェルマータは長くはありません。ティンパニが最後の一打を軽く叩いています。
 1950年代後半のステレオ初期には「運命」の演奏がたくさん録音されていましたが、その中にあってプロハスカはしっかりと存在感のある演奏を残してくれました。


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