2000年代の演奏

ヤープ・ファン・ズヴェーデン/ダラス交響楽団(2007)
CD(ダラス交響楽団自主制作 DSOLIVE001)

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   (第1楽章&第4楽章リピート:原典版)
2.   〃    /交響曲第7番イ長調Op92

  ヤープ・ファン・ズヴェーデン指揮
   ダラス交響楽団
   録音 2007年11月1〜4日ライヴ(1)
       2007年11月8〜11日ライヴ(2)

 オランダの指揮者ズヴェーデンの「運命」と第7番です。ズヴェーデンはハーグ・レジデンティ管弦楽団と交響曲全集を録音していました。このアルバムはダラス交響楽団とのもので、ズヴェーデンは2008年のシーズンから音楽監督に就任しています。
 交響曲第5番「運命」は古楽器奏法を取り入れながらも重厚な響きを出しています。フェルマータは短めですが21小節は極端に短いです。提示部の厚みのある響きは素晴らしい。展開部では調和のとれた響き、絶妙な盛り上がりが見事、オーボエ・カデンツァから切れ目なく入る再現部のファンファーレはファゴットで吹いています。コーダへの経過部の厚みのある響きが見事です。第2楽章は速いテンポで主題を演奏していますが経過部で若干テンポを落としてたっぷり歌わせていました。第1変奏、第2変奏は速いながらも響きの良さは抜群です。木管がきれいに響いています。木管四重奏は大変よく響きます。143〜144小節のスタッカートをしていませんのでベーレンライター版を使っているかもしれません。コーダではテンポを落として一気にテンポアップしていました。
 第3楽章はテンポが速いだけに大きなリタルダンドが効果的です。ホルンの主題が大変明るく響きます。同じ曲でも印象が違いました。フーガは素晴らしい演奏で弦楽が凄い。フィナーレは速めのテンポですが重厚な響きで、ホルンの響きには圧倒的されます。提示部のリピートがあります。このリピートがまた大変熱気を帯びた演奏になっていました。展開部も良い響きです。大変緊張感のある演奏で乱れのない弦楽セクションが凄い。第3楽章の回想のオーボエがきれいです。再現部はも厚みがありホルンセクションはベルリン・フィルのような響きを出しています。コーダの和音の連続、ホルンの主題からピッコロの響きが大変きれいです。プレストからが凄いです。まさにプレストという速さでも382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みもはっきり聞こえています。そして金管の強奏は圧倒的でたっぷりとした長さのフェルマータです。これはブラボー・・・
 交響曲第7番は冒頭からズシンと良い響きを出しています。序奏の繊細な表現は驚きです。提示部は大変メリハリがあり聞き入ってしまいます。主題の全合奏ではホルンの響きが素晴らしい。提示のリピートで再度聞かれるのが嬉しいです。展開部の圧倒的な響きがまた凄い。コーダの低弦のフレーズの連続には圧倒されます。終結部のホルンの強奏がまた凄い。第2楽章:アレグレットは弦楽の響きが大変きれいで聞き惚れます。対旋律の交錯が素晴らしい。聞けば聞くほど感動でした。第3楽章のスピード感ある演奏も素晴らしい。とにかく速いのでオーケストラの実力が第1級という現れでしょう。フィナーレはここも速いテンポで息をもつかせない緊張感に満ちた演奏です。ホルンのパワー炸裂です。弦楽セクションは編成が大きいようで厚みがあります。展開部の壮絶な響きは20世紀の巨匠たちに負けないものでした。それにしてもこのオーケストラのホルンセクションのパワーは素晴らしい。この演奏は21世紀の演奏の中では特筆すべきものでしょう。


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