1960〜1979年の演奏


カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1974)

LP(DGG MG 2490)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:15/9:54/15:56
   (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)
CD(DGG 447 400-2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:17/9:54/5:09/10:47
   (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)

  カルロス・クライバー指揮
    ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音1974年3月&4月

 発売当初から評判の録音でした。現在でもこれは「運命」の代表的なレコードとして忘れられない存在でしょう。この録音にあたってはさすがのカルロスでも、父エーリヒ・クライバーの録音を無視することができず、彼の使用したスコアを参考にしたようです。また1978年にシカゴ交響楽団で運命を指揮したときには父のスコアを使ったそうですからいかに父の存在が大きかったかが伺えます。(このシカゴ盤はCD化されています)
 交響曲第5番の第1楽章は速いテンポで始まり、しかもフェルマータの後に間をおかないのはエーリヒと同じです。違うのはウィーン・フィルだったことです。ウィンナホルンのファンファーレが力強い響きを出しています。緊張感あふれる提示部でした。展開部もウィーン・フィルのうまさが冴えて、管の美しさとあいまって完璧な響きを作り出していました。ウィンナオーボエのカデンツァも魅力です。またティンパニの響きは素晴らしいもので劇的効果抜群です。コーダでもテンポの変化無しに突っ走り、エーリヒと全く同じというのは面白い。しかしながらこの第1楽章はウィーン・フィルの第5の中でもトップクラスの演奏でした。
 第2楽章はたっぷりと歌わせているので、旋律の美しさを大切にしているようです。木管の響きはさすがに美しく、第1変奏がこれほどきれいに聞えた演奏は久しぶりでした。第2変奏はいうに及ばず、木管の合いの手も絶品です。第3変奏の木管は伝統的に8分音符をスタッカートしています。この楽章は抜群のアンサンブルと厚みのある音が見事です。
 第3楽章はホルンの強奏が凄い。恐らく4本で吹いていると思います。びっくりしました。トリオのフーガは弦の歯切れ良いリズムが素晴らしいものにしています。後半の静かな部分も申し分ありません。フィナーレへのクレッシェンドは見事です。
 フィナーレは冒頭金管が強めで厚みのある演奏でした。ホルンの主題も大きく響いています。リピートは弦が張り切っていますのでこちらも聞き物。ホルンの主題があまりに大きい音で驚きますが、中にはこんな演奏があってもいいでしょう。4本以上の音ですが・・。展開部はよく鳴っています。熱いです。4管編成の音の厚みがよく出ています。第3楽章の回想はテンポが速くあっという間の再現部です。この締めくくりは見事です。コーダではピッコロを大きく鳴らしていました。プレストは圧倒的な演奏で終わりました。


トップへ
戻る
前へ
次へ