2000年代の演奏

ジョヴァンニ・アントニーニ/バーゼル室内管弦楽団(2008)

CD1(SONY 88697648162)
CD2(SONY 19439737032)全集

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
       (第1楽章&第4楽章リピート:原典版)
2.   〃    /交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」

  ジョヴァンニ・アントニーニ指揮
   バーゼル室内管弦楽団
   録音 2008年7月8&9日(1)
       2009年7月3&5日(2)

 イタリアのリコーダー奏者で指揮者のジョヴァンニ・アントニーニがスイスのバーゼル室内管弦楽団を指揮した「運命」と「田園」です。この演奏はオリジナル楽器を使用したものでナチュラル・トランペットやナチュラルホルンのほか、ガット弦の弦楽器を使うものでかなり面白い響きの演奏になっています。
 交響曲第5番「運命」はやや早めのテンポの第1楽章は冒頭のフェルマータが長めです。ホルンのファンファーレはナチュラルホルンのバリバリの音がホール一杯に響きます。なお、この運命ではオリヴィエ・ダルブレがホルンのトップを吹いています。弦楽の弾むような演奏が印象に残ります。展開部では弦楽の1拍目の強調、管の穏やかな響きがきれいです。またホルンのゲシュトップが金属的でこれがまたたまりません。再現部のファンファーレはファゴットで吹いています。コーダへの経過部の響きは厚みがあります。これまでの古楽器演奏の「運命」とは異なる響きを出した凄い演奏といえましょう。コーダの最後の和音もズシンときます。
 第2楽章は程よいテンポで歌う主題がガット弦の独特の響きで聞き逃せません。弦の刻みがまた素晴らしい音です。また木管が大変きれいに響いています。バロックオーボエの響きが印象的です。木管四重奏は流れるような演奏で大変よく響きます。またティンパニのクレシェンドも凄いです。第3楽章は序奏で絶妙なリタルダンドとナチュラルホルンの主題に圧倒されます。フーガは速いテンポで見事なアンサンブルが聞かれます。
 フィナーレは重厚な響きが素晴らしい。また弦のアクセントが極端でこれが効果的になっています。ホルンと木管の主題も厚みがあります。提示部のリピートがあります。展開部の演奏がこれほど楽しく聞こえてくる演奏は多くないでしょう。第3楽章の回想は大変静かで一気に再現部に入ります。この再現部ではピッコロがよく響いていますので存在感があります。コーダの和音の連続、そしてホルンの主題はきれいな響きです。ピッコロも良く響きます。プレストからの演奏は圧倒的です。これは名演です。
 交響曲第6番「田園」は第1楽章冒頭から古楽器独特の響きがあります。徐々に良い響きになってきます。提示部のリピートがたまりません。オーボエの美しい響きは素晴らしく、フルートの響きとともに聞き入ってしまいます。なお、ホルンのトップはジャン・フランソワ・テイラーでやわらかい響きを出しています。弦楽セクションのうまさも聴きものです。コーダの流麗な演奏は素晴らしい。第2楽章「小川のほとりの情景」は弦楽の小川のせせらぎ、クラリネットとファゴットの歌が素晴らしい。目からうろこの演奏です。田園のかたまったイメージを刷新した演奏です。コーダの夜うぐいす、うずら、カッコーの響きは素朴な音が素晴らしい。
 第3楽章は弦楽の響きとナチュラルホルンの響きが聴きものです。オーボエ、クラリネット、ホルンと続く主題の流れも見事です。トリオで響くナチュラルトランペットの音も聞き逃せないでしょう。第4楽章「嵐と雷雨」では豪快な音、ティンパニの強打、トランペットの強奏が素晴らしい響きです。コーダの遠雷から嵐のあとの感謝の気持ちを歌う「牧人の歌」への流れもきれいです。ホルンのソロは実に素晴らしい響きです。ナチュラルホルンの太い響きが生きています。経過部におけるトランペットの太い音がまた異様でアントニー二の狙いが見事にはまった名演といえましょう。


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