ベートーヴェン/ホルン・ソナタ

イアン・バウスフィ−ルド(2009)
CD(CAMERATA CMCD−28209)

1.ベートーヴェン/ソナタ ヘ長調Op17
   (原曲:ホルンまたはチェロ・ソナタ)
2.ベートーヴェン/三重奏曲ト長調WoO.37
   (原曲:フルート、ファゴットとピアノ)
3.ブラームス/三重奏曲変ホ長調Op40
   (原曲:ホルン三重奏曲変ホ長調)

  イアン・バウスフィ−ルド(トロンボーン)
   ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク
              (ヴァイオリン)
   岡田 博美(ピアノ) 
   録音 2009年6月26〜29日
   ウィーン/スタジオ・バウムガルテン

  イアン・バウスフィ−ルドはイギリスのトロンボーン奏者でブラスバンドを経て、ヨーロッパ・ユース、そしてハルレ管弦楽団のトロンボーン奏者を経験してのち、1988年から2000年までロンドン交響楽団の首席をつとめ、その後ウィーン・フィルのトロンボーン奏者となり首席奏者をつとめています。
  ベートーヴェンのソナタは原曲がホルン・ソナタですが、当時はレコードなどありませんから音楽を売るためには楽譜を出版して売るしかありませんでした。そのためにチェロでも演奏できるように書きましたが、他にもフルートとピアノ、弦楽四重奏などにも編曲されていました。さて、このトロンボーンで演奏しているソナタ ヘ長調ですが、ホルン・ソナタと同じ譜面ではありません。80%ほどは同じですが細かいフレーズなどはトロンボーンで吹き易いように編曲されています。そのため原典版を聴いている面白さがあります。それにしてもバウスフィ−ルドというトロンボーン奏者は素晴らしいテクニックですからホルンの楽譜でもいけそうです。
 ベートーヴェンの三重奏曲ト長調WoO.37はフルート、ファゴットとピアノのための三重奏曲です。ここではフルートをヴァイオリンで、ファゴットのパートをトロンボーンで吹いています。第3楽章の「主題と変奏曲」は難しいようですがなんなく吹いているようです。
 ブラームスのホルン三重奏曲変ホ長調をトロンボーンで吹くというのは聴いたことがありませんが、音色も似ていますから吹いてもよさそうですが、スライドの難点から挑戦する演奏家が極めて少ないのでしょう。もっともリンドベリがモーツァルトのホルン協奏曲を全曲録音したことを考えればあっても不思議はありません。バウスフィ−ルドはホルンパートをそのまま吹いています。第1楽章も素晴らしい演奏ですが、第2楽章のスケルツォの緊張感は凄いものでとてもトロンボーンの演奏とは思えないほどです。まるでホルンを聴いているかのようです。実際に同じような音色でホルンを吹いている演奏家もいるからです。第3楽章:アダージョはやわらかな音色のトロンボーンが大変きれいで、ホルンだけで演奏するのはもったいないと思います。フィナーレの演奏はまるでホルンを聴いているかのようです。違うとしたら低音の響きでしょう。管の長いホルンは太い音が響くからです。バウスフィ−ルド音を割らずにやわらかな響きを大切に吹いています。トリオを吹く上では大切なことですが、この演奏は歴史に残る名演といってよいでしょう。


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