ベートーヴェン/ホルン・ソナタ

コンスタンティン・ティモヒネ(2014)
CD(自主制作盤)

ホルンとピアノのための作品集
1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタOp17
2.シューマン/アダージョとアレグロOp70
3.R・シュトラウス/アンダンテ ハ長調
4.F・シュトラウス/夜想曲Op7
5.フランセ/ディヴェルティメント
6.サン=サーンス/ロマンス ヘ長調Op36
7.グリエール/ロマンスOp35−6
8.スクリャービン/ロマンス
9.グラズノフ/夢Op24
10.デュカス/ヴィラネル
11.サロメ/メロディ ハ長調
12.ボザ/森にてOp40

  コンスタンティン・ティモヒネ(ホルン)
  ダニエラ・ティモヒネ(ピアノ) 
   録音 2014年4月25〜27日

 ウクライナのキエフ生まれのコンスタンティン・ティモヒネ(1973〜)はキエフのチャイコフスキー音楽院で学び、ホルンはブルーノ・シュナイダーに師事、チューリッヒでデイヴィッド・ジョンソンに師事、またナチュラルホルンをグレン・ボーリングに師事しています。その透明感豊かな音色はきれいすぎるほどです。
 ベートーヴェンの「ホルン・ソナタ」はやや速めのテンポで演奏していますが、このテンポはピアニストも大変でそのピアノが素晴らしい演奏をしています。チューリヒの教会で録音したために残響が豊かで響きの良さは抜群です。コンスタンティンは40代のベテランでそのテクニックは驚きです。
 シューマンの「アダージョとアレグロ」は透明感豊かな響きのアダージョが実に美しい。ピアノも絶品でホルンの奥深い響きと共にかつてない雄大さを感じます。アレグロのテンポはブレインのように速くその見事な演奏は驚きで、ホールに響き渡るホルンの素晴らしさと美しい響きに聞き惚れてしまいます。
 リヒャルト・シュトラウスの「アンダンテ」はハ長調の重厚な響きでピアノとホルンが作り出す雄大な音楽があります。アレキサンダーの音がよく響きます。
 フランツ・シュトラウスの「夜想曲」は表現が難しい作品ですがコンスタンティンのホルンはレガート、スラーが巧みで強弱のメリハリのある見事な演奏です。
 フランセの「ディヴェルティメント」は3つの楽章で構成されています。第1楽章「アレグロ」の鮮やかなタンギングが見事です。第2楽章「アンダンティーノ」は流麗な演奏で、第3楽章「カンツォネッタ」では切れのよいホルンとピアノの響きがたまりません。
 サン=サーンスの「ロマンス ヘ長調」は定番の小品。やや速めのテンポで演奏しています。それでもロマンティクな演奏になっていることはいうまでもなく、ホールに響くホルンの美しさがあります。
 グリエールの「ロマンスOp35−6」は4つの小品の中の1曲です。こちらはサン=サーンスのロマンスよりもロマンティックな演奏で、とても感動的な演奏です。ピアノの響きもよくため息が出そうです。
 スクリャービンの「ロマンス」はピアノのアルペッジョで始まるところがなんとも言えませんが、ホルンの抒情的な主題もまたきれいなもので、ホルンならではの響きの良さが味わえます。
 グラズノフの「夢」は古くから知られた名曲です。管弦楽版もありますが、ピアノ版の良さはホルンがたっぷり聴けることでしょう。(ブックレットではスクリャービンとグラズノフが逆になっています)
 デュカスの「ヴィラネル」はホルンの定番中の定番。前半を自然倍音で演奏するのが指定ですが、コンスタンティンはバルブを使って吹いています。ピアノはここでも見事な演奏でホルンと共に名演奏を繰り広げます。後半のうまさはミュートを付けても変わらずコーダのテンポの変化もにくいです。終結の鮮やかさも素晴らしい。
 テオドール・サロメ(1834〜1896)の「メロディ ハ長調」は初めて聴きますが、19世紀ロマン派時代のロマンティックなメロディが流れます。
 最後の曲ボザの「森にて」はヴィラネル同様パリ音楽院の卒業試験の課題曲でした。狩のホルンを思わせるもので森のホルン、こだま、遠近感と多彩な表現が要求されるだけにこの曲を最後に持ってきたことはさすがです。雄大さと迫力を感じさせます。
 それにしてもこのアルバムは演奏、録音、ピアノ伴奏と絶賛したいアルバムです。


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