1980〜1999年の演奏

デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団(1997)


CD1(ARTE NOVA BVCC−6024)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:49/8:45/7:19/10:25
CD2(ARTE NOVA BVCE−38097〜101)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:48/8:43/7:19/10:21
CD3(BMG 82876 52583 2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:47/8:42/7:18/10:21
(第1楽章、第3&4楽章リピート:ベーレンライター版)

 デイヴィッド・ジンマン指揮
  チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
  録音 1997年3月25&26

  この演奏を初めて聴いた時は大変衝撃を受けました。新しい楽譜での世界初録音というのでどんな演奏かと聴いてみましたら、テンポは速いし、2楽章以外では提示部のリピートをしてるし、しかも第1楽章のオーボエカデンツァでは即興のおまけまでついていたのです。またカップリングの田園がまたえらい演奏でテンポは速く、第1楽章の第2主題では木管にこぶしのきいた装飾音までつけていたのにまた驚きでした。

 交響曲第5番の第1楽章は速いテンポの演奏ですが、2分音符108のテンポはこれくらいでしょう。提示部は見事な演奏です。ホルンのファンファーレの強奏は抜群でした。展開部もスリリングです。オケのテクニックは抜群でした。オーボエカデンツァは大変美しく響きます。401〜406小節でホルンの閉止音が聞えますが、ナチュラルホルンの響きを取りいれた斬新な表現です。見事でした。
 第2楽章はベーレンライター版の細かい指示がよくわかる演奏でした。スタッカートがかなり多いです。演奏は完璧で申し分ありませんでした。第2変奏の木管四重奏はとても美しい響きです。第4変奏のファゴットの美しい音色は他ではなかなか聞けません。
 第3楽章も見事です。ホルンの主題もきれいです。テンポが速いので、トリオのフーガは凄まじい気迫に満ちていました。この版では提示部のリピートがありますが、ギュルケ版とは異なり全音符の小節を入れないので、そっくり冒頭から始まるのと同じです。この凄い演奏がリピートされるとびっくりします。そしてフィナーレまでの経過部がまた素晴らしい。
 第4楽章は弦楽器を十分に響かせた冒頭でした。管を抑え気味という物足りなさはありますが、十分にオケは響いていました。提示部のリピートをしていますが、今度は管を鳴らしてきました。つぼを心得た演奏です。第3楽章の回想ではオーボエとファゴットが美しく響いています。再現部では内声部の音が聞えるところがあり驚きます。pのところをフォルテで演奏しているようです。コーダも見事でした。ピッコロがかなりの強奏でした。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みははっきり聞こえます。これは見事な演奏です。聴き終えるとベーレンライター版はまだまだ開拓の余地がありそうです。おもしろいです。 


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