田園交響曲

カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1971)

CD(DGG 479 1949)全集
LP(DGG MG 9801/9)全集

ベートーヴェン:交響曲全集
CD−3
1.交響曲第4番変ロ長調 Op60
2.交響曲第5番ハ短調 Op67「運命」
  8:30/10:51/6:17/9:15
 (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
CD−4
1.交響曲第6番ヘ長調 Op68「田園」
2.序曲「レオノーレ」第3番Op72b
3.歌劇「フィデリオ」序曲Op72c
CD−5
7.交響曲第7番イ長調 Op92
8.交響曲第8番ヘ長調 Op93

 カール・ベーム指揮
   ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 録音 1970年4月25〜30日(5番&9番)
     1971年5月24〜26日(6番)
     1972年9月10〜18日(1〜4番、7〜8番)
     1969年(Op72bc)

 カール・ベームとウィーン・フィルによるベートーヴェンの交響曲全集です。その中から4番から8番を紹介します。
 交響曲第4番は第1楽章の序奏で冒頭から美しい響きを出しています。ベームの指揮はちょっと違います。そして提示部の主題は素晴らしい歌い方をしています。テンポは速めですが滑らかな演奏です。弦楽の厚い響きが素晴らしいものです。展開部から再現部の響きはさすがにウィーン・フィルの魅力を感じます。コーダの木管の美しい音色、終結も素晴らしい響きです。第2楽章のアダージョはよいテンポで強弱のメリハリを付けた演奏です。管楽器の響きもきれいです。後半も弦楽の響きの良さと、ホルンの響きもきれいです。第3楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェは弦楽と管楽器の対話のように聞こえます。トリオも同じです。強弱の付け方が素晴らしいです。第4楽章のアレグロ・マ・ノン・トロッポは弦楽の刻みが見事な演奏です。オーボエとフルートの響きはこれが大変きれいです。コーダの演奏は素晴らしいです。

 交響曲第5番「運命」の第1楽章は良いテンポで、フェルマータは長いです。厚い響きは感動です。ホルンのファンファーレは良い響きです。提示部の第2主題はきれいに響きます。展開部でも冒頭のフェルマータは長いです。弦楽の響きの良さ、管楽器との対話もきれいです。ホルンの響きもきれいです。オーボエのカデンツァも大変きれいです。再現部のファンファーレはファゴットにホルンを重ねています。それにしても素晴らしい演奏です。コーダまでの圧倒的な演奏、コーダ前のフェルマータも大変長いです。第2楽章のアンダンテ・コン・モトは程よいテンポで演奏しています。木管は大変良い響きを出しています。第1変奏の美しい響き、そしてフルートの響きがきれいです。第2変奏の盛りあがりの美しさ、ファゴットとクラリネットのきれいな響き、そして木管四重奏の美しさはウィーン・フィルらしいです。第3変奏の木管の良い響き、続くクライマックスも聴きものです。第4変奏のファゴットがよい響きです。そしてコーダまでの全合奏が素晴らしい響きです。第3楽章は序奏のリタルダンドとフェルマータの長さも聴きもの。ホルンの主題は迫力があります。フーガにおける弦楽の厚みのある演奏が素晴しい。フィナーレまでの経過部の緊張感も素晴らしいです。フィナーレは冒頭から重厚な響きが聴かれます。ホルンの響きもウィンナホルンの厚みがあります。展開部もよい響きです。トロンボーンが良い響きです。ティンパニも良い響きを出しています。第3楽章の回帰はオーボエのきれいな響きがあります。再現部は厚みのある演奏、圧倒的な響きが聴かれます。コーダのホルンの主題とピッコロの明るい響きが印象的です。プレストからの迫力は見事です。最後のフェルマータはしっかり伸ばしています。これは素晴らしい演奏です。

 交響曲第6番「田園」は第1楽章の冒頭は程よいテンポで静かに始まり、オーボエの主題と共に全合奏になります。ホルン以外の金管と打楽器の入らないこの楽章はきれいな響きになります。提示部のリピートがありますので再び楽しむことができます。展開部は弦楽と木管によるフレーズの繰り返しがきれいです。弦楽と管楽器とのバランスも良く、美しい田園です。再現部からコーダは絶品の演奏です。第2楽章の「小川のほとりの情景」は小川の流れを感じさせる弦楽の動きがきれいな響きです。木管による主題も良い響きです。ファゴットの第2主題が小川の流れの良さを感じさせます。木管楽器の美しい音色が素晴らしいです。中でもフルートの美しい響きは絶品です。コーダのフルート、オーボエ、クラリネットの小鳥の鳴き声は森の奥深さを感じます。素晴らしい演奏です。第3楽章のアレグロは快適なテンポの演奏です。ウィンナホルンの強い音が面白いです。オーボエ、クラリネット、ホルンと続くソロはさすがにきれいです。第4楽章の「嵐」は嵐の前の静けさから一気に嵐の大雨になる様子、ティンパニによる雷鳴と生々しい響きがあります。また大雨がきて、雲が流れていく様子など素晴らしい表現力です。コーダの遠雷の表現が素晴らしいです。第5楽章の「嵐のあとの感謝の気持ち」はホルンの楽しそうな歌で感じられます。そして「牧人の歌」は喜びにあふれています。小鳥の鳴き声や角笛の音が響く素晴らしい「田園」です。コーダの演奏は感動的です。この演奏はウィーン・フィルによる理想的な「田園」のひとつと言ってよいでしょう。名演奏です。

 序曲「レオノーレ」第3番は序奏から素晴らしい響きが聴かれます。フルートの美しい響き、時には激しい響きも聞かれるこの演奏はドレスデンで録音されたためか響きに違いがあります。メリハリのあるこの演奏はさすがに緊張感があって見事なものです。
 歌劇「フィデリオ」序曲は強弱のメリハリをはっきりつけた演奏はさすがに凄いです。ホルンの主題はきれいな響きです。

 交響曲第7番は第1楽章序奏の重厚な響きとホルンのやわらかな響きがきれいです。弦楽の上昇フレーズの連続は聴きものです。刻みのあざやかなこと、管楽器の美しさがあります。残響の素晴らしいことはムジーク・フェラインザールの特徴です。提示部のフルートも大変きれいです。全合奏におけるホルンの素晴らしい響きは聴きもの、展開部の弦楽の厚みのある響き、管楽器の響きの良さは素晴らしいものです。再現部では迫力のある演奏が聴かれます。コーダの低弦のフレーズの響きの素晴らしさ、ホルンのハイトーンも聴きものです。第2楽章の「アレグレット」は弦楽の響きのよさ、対旋律の美しさがあります。ベームの指揮は素晴らしいものです。ウィーン・フィルの弦楽の美しさは絶品です。管楽器が加わると感動的な響きになります。ホルンのソロもきれいです。中間部の管楽器の演奏は素晴らしいです。コーダの感動的な響きもあります。最後は伸ばしてきれいに終わります。第3楽章の「プレスト」は軽快な演奏で勢いのある演奏です。管楽器は大活躍です。トリオは遅めのテンポでクラリネットとホルンがきれいに響きます。これは素晴らしい演奏です。第2トリオも感動的な演奏です。コーダは見事な終わり方でした。第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」は快速なテンポで重厚な響きが聴かれます。ホルンのハイトーンも大変よく響きます。ウィンナホルンは難しいですが、これは見事な演奏です。展開部から再現部の素晴らしい演奏、勢いのある演奏はベームらしいです。コーダの金管の迫力は絶品です。これには思わず喝采の拍手でした。

 交響曲第8番は第1楽章の弦楽の華麗な響きが聴きものです。主題の美しい響き、木管のユニゾーンもきれいです。展開部から再現部の厚い響きには圧倒されます。木管楽器の美しい響きも聴きものです。コーダは感動ものでした。第2楽章のスケルツァンドはメトロノームのようなリズムを刻むのが特徴です。快適なテンポで演奏しています。弦楽の緻密な演奏、やはりウィーン・フィルは素晴らしいものです。第3楽章のメヌエットは大変良い響きでファゴットの響きもきれいです。トリオのホルンの二重奏の流麗な演奏とクラリネットの響きの美しさは素晴らしい響きです。このメヌエットの聴きどころです。大変きれいな演奏です。第4楽章はアレグロ・ヴィヴァーチェ、弦楽の刻みの素晴らしい響きと、管楽器の厚い響きが素晴らしい演奏です。この第8番も感動的で大変な名演奏です。ムジーク・フェラインザールの残響の良さには感服でした。
(CDは2013年発売のEU盤全集、LPは国内盤の全集)


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