第七交響曲

カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1957)
CD(ANDANTE 4988)

ウィーン・フィル/ベートーヴェン/交響曲名演集
CD1
1.交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
 (7:08/9:22/4:50/8:00)
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
2.交響曲第7番イ長調Op92
CD2
1.交響曲第1番ハ長調Op21
2.交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
CD3
1.交響曲第9番ニ短調Op125「合唱付」

 ユージン・オーマンディ指揮(運命)
 カール・シューリヒト指揮(7番)
 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮(1&9番)
 クレメンス・クラウス指揮(田園)
  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  ヒルデ・ギューデン(ソプラノ)(9番)
  ロゼッテ・アンダイ(アルト)(9番)
  ユリウス・パツァーク(テノール)(9番)
  アルフレート・ペール(バス)(9番)
  ウィーン・ジングアカデミー合唱団(9番)
   1953年6月13日ライヴ録音(運命)
   1957年6月2日ライヴ録音(7番)
   1952年11月29日ライヴ録音(1番)
   1952年3月29日ライヴ録音(田園)
   1952年2月3日ライヴ録音(9番)
   以上ムジーク・フェラインザール

 ANDANTEから2002年に発売されたウィーン・フィルのベートーヴェン・ライヴ録音です。いずれも貴重な録音ばかりで中でもオーマンディの「運命」は初出音源で店頭で見たときは驚きました。シューリヒトの第7番は同じ時期にパリ音楽院と全集の録音をしていただけに大変興味深い演奏でした。
 「田園」は名指揮者クレメンス・クラウスの指揮ですがレコード録音に恵まれなかったためにベートーヴェンの演奏を耳にする機会は少なくて、この「田園」はその表現力のすばらしさに注目です。同じ時期にフルトヴェングラーとスタジオ録音があるだけにウィーン・フィルの水を得た魚のように生き生きした演奏が素晴らしく、何度も聴きたくなります。
 1番と9番はフルトヴェングラーの演奏です。1番は1952年11月24〜28日のスタジオ録音直後のライヴでした。このライヴは11月29日になっていますが、11月30日と記載された録音との違いは確認しておりません。第9番「合唱」は1952年2月3日のライヴで幻の録音とされていました。録音状態は比較的良いようです。同じウィーン・フィルでもフルトヴェングラーが振るとフルトヴェングラーのベートーヴェンになっているのはやはり神業としかいえません。
 オーマンディによる「運命」は速いテンポでグイグイ進む鮮やかな演奏です。弦楽器と管楽器のバランスの良さはウィーン・フィルの伝統の響きそのものです。第1楽章再現部のファゴットのファンファーレはホルンが吹いています。第2楽章の表情豊かな演奏は癒されます。木管四重奏のあまい響きはウィーン・フィルならではの美しさでしょう。第3楽章は速めのテンポですが序奏のフェルマータは長めです。フーガの鮮やかな演奏は弦楽セクションの凄腕が冴えています。フィナーレはかなりの速いテンポで進んでいます。その切れの良さは緊張感も高まり、良い響きを構築しています。展開部の見事なまでのバランスの良さは完璧といえましょう。まるでカラヤンかシューリヒトが指揮しているかのような演奏です。コーダの和音、ホルンの主題から終結まで息をもつかせない凄い演奏が繰り広げられています。最後のフェルマータはティンパニの一打で終わっています。聴衆の興奮はいかばかりだったでしょう。


トップへ
戻る
前へ
次へ