第七交響曲

朝比奈 隆/NHK交響楽団(1995)
CD(fontec FOCD−9200/2)3枚組

朝比奈隆/N響/ベートーヴェン/交響曲選集
CD1
1.交響曲第1番ハ長調Op21
2.交響曲第3番変ホ長調Op55「英雄」
CD2
1.交響曲第4番変ロ長調Op60
2.交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  (9:04/11:56/6:15/12:49)
  (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)
CD3
1.交響曲第7番イ長調Op92
2.「エグモント」序曲Op84

  朝比奈 隆指揮
   NHK交響楽団
   1967年10月17日(1番、3番&序曲)
       東京文化会館ライヴ
   1994年6月4日(5番)
   1995年12月13日(4番&7番) 
   以上NHKホール・ライヴ 

 このアルバムは朝比奈隆がNHK交響楽団を指揮したベートーヴェンの交響曲5曲をまとめた貴重な遺産です。60年代のN響は多くの指揮者に鍛えられたことからあらゆる曲に対応できました。
 ベートーヴェンの1番の気品あふれる演奏は驚くほど整然としたものです。また英雄の格調高い演奏も素晴らしく、冒頭の和音をテヌートでズシッときめる技ありの演奏は凄いです。第2楽章のオーボエの美しさ、第3楽章の3本のホルンの鮮やかな演奏も素晴らしいです。フィナーレの緊張感あふれる演奏も格別です。
 交響曲第4番は序奏の透明な響き、提示部の抜群の響きは絶品です。完璧な音づくりといえましょう。フィナーレは少し遅めのテンポで内声部までくっきりと鳴らしています。
 交響曲第5番「運命」は大変な名演です。冒頭の厚みのある響き、ティンパニのクレッシェンドからホルンのファンファーレの圧倒的な響きと申し分ありません。遅めのテンポでより深みのある重厚な響きを出しています。展開部では弦楽器と管楽器の美しさ、フェルマータの長さとティンパニの強打、カデンツァのオーボエも美しい。再現部の圧倒的な響きはベートーヴェンの音楽の素晴らしさを改めて感じます。コーダの主題の強調と長いフェルマータが感動的です。第2楽章は主題を弾く弦楽の素晴らしい響きと歌が聞き所です。特にヴィオラ・セクションの充実した響きにも耳を奪われます。木管四重奏の美しさもさることながらファゴットの響きの良さに注目でしょう。第3楽章のテンポの良さは絶妙です。この遅めのテンポで吹くホルンの主題がなんともいえません。このテンポで演奏されるフーガはアウフタクトがはっきりとして曲の特徴が見えてきます。フィナーレへのクレッシェンドは見事です。そしてフィナーレの圧倒的かつ重厚な響きはN響の「運命」の中でも白眉中の白眉といっても過言ではないでしょう。提示部のリピートがあります。展開部の演奏が実に感動的です。弦と管、ティンパニの見事な融合があります。第3楽章の回帰も絶妙です。再現部からコーダの演奏も息をもつかせない見事な演奏の連続です。コーダのゆったりとした和音の連続は残響までも音楽になっています。これはブルックナーを思わせる演出でしょうか。プレストからの圧倒的な演奏、最後のフェルマータでティンパニの2度打ちが豪快です。聴衆の感激はいかほどだったでしょうか。大騒ぎでしょう。
 凄いのは交響曲第7番も同じです。第1楽章冒頭をいかに響かせるかが指揮者の腕の見せ所ですが、これほど低音までずしんと響かせて残響を生かした演奏もなかなかありません。テンポ設定の絶妙なことだけでなくN響の優秀な腕があってこそ出せる音でしょう。序奏の響きはかつてのドイツのオーケストラのようです。提示部の演奏の素晴らしさも言うこと無しです。リピートがありますのでホルンはきついですが、このホルンの活躍は凄いの一言につきます。展開部の弦楽と管楽器の応答の絶妙なこと、トランペットのうまさも光ります。コーダの低弦の圧倒的な響き、そしてホルンのハイトーンに感激でした。第2楽章:アレグレットをこれほど神聖なまでの響きを出している演奏は多くはないでしょう。主題と対旋律の絶妙は構成はこの曲の特徴ですが、まさに絶品の演奏。クラリネットとホルンのソロが美しい。第3楽章:スケルツォはわくわくするような演奏です。楽しくなります。フィナーレは圧倒的な音の連続です。管と弦の絶妙な対話、ホルンの絶叫、たまらない演奏です。ここでも内声部のヴィオラの活躍があります。第7の演奏の中でもトップクラスの名演です。このアルバム5曲の中でもダントツ凄い演奏でした。


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