シューマン/アダージョとアレグロ

ミシャ・グロイル(2017)
CD(Solo Musica SM268)

1.ベートーヴェン/ホルン・ソナタ ヘ長調Op17
2.シューマン/アダージョとアレグロOp70
3.ヴィトマン/独奏ホルンのためのアリア
4.ブラームス/ホルン三重奏曲変ホ長調Op40

  ミシャ・グロイル(ホルン)(1〜4)
  フー・スンヨン(ピアノ)(1、2&4)
  アンドレアス・ヤンケ(ヴァイオリン)(4)
  録音2017年2月8〜10日

 ミシャ・グロイルはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席ホルン奏者です。古典の名曲と現代作品のソロを演奏しています。
 ベートーヴェンの「ホルン・ソナタ」は済んだ音色のホルンが好印象です。音色が安定していて力みのない演奏です。美しい響きを出しているのはピアノも同じでこの演奏にはホルンとピアノが作り出す響きの美しさがあります。第3楽章の明るさとピアノのきらめきも素晴らしい。
 シューマンの「アダージョとアレグロ」はベートーヴェンのソナタと同様にホルン作品の定番です。グロイルはアダージョを少し速めに演奏していますが、メロディの美しさを出したかったのでしょう。穏やかな演奏の中に美しさがあります。滑らかなスラーが実に素晴らしい。アレグロは軽やかな演奏です。力まずにこの作品の美しさを出しています。なんともいえない素晴らしい演奏です。
 イェルク・ヴィトマン(1973〜)は現代作曲家です。「独奏ホルンのためのアリア(エア)」は静かに始まるソロ・ホルン作品です。自然倍音を使うところが特徴です。ゲシュトップも使いますのでナチュラルホルンでもいいかもしれません。作品としては穏やかな部分と激しい動きと演奏は優しいものではありません。後半には多彩な技巧を使います。独奏ホルン作品としては魅力的です。8分を超える大作です。
 ブラームスの「ホルン三重奏曲」はホルンが前面に出ている演奏です。ヴァイオリンの響きも良いものでピアノはそれほど強くは響かせないのでホルンの引き立て役になっています。第1楽章のホルンは良い響きでピアノ・トリオというよりもホルン・トリオらしくホルンが目立つ演奏です。とはいえグロイルのホルンは力まず美しい響きです。第2楽章のスケルツォはピアノも輝きをみせておりヴァイオリンとホルンが明るく歌います。楽しいスケルツォです。トリオの歌がまたいい演奏でピアノがきれいです。第3楽章のアダージョ・メストはやや速めのテンポで演奏しています。哀愁的な主題が歌われます。ホルンとヴァイオリンの調和のとれた響きがきれいです。第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」はホルンの活躍がめざましいです。ここではヴァイオリンとピアノも良い響きでフィナーレの響きが厚いものになっています。全体としてはホルンが前面に出ていますがバランスの良い演奏です。快演です。
 このアルバムは古典の作品から新鮮な響きを出してくれた名演奏といえます。


トップへ
戻る
前へ
次へ