第七交響曲

岩城 宏之/オーケストラ・アンサンブル金沢(2002)
CD(Waner WPCS-11501)

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
         (第1楽章リピート:原典版)
2.   〃    /交響曲第7番イ長調Op92

  岩城 宏之指揮
   オーケストラ・アンサンブル金沢
   録音 2002年9月12日(1)
       2002年5月23日(2)
    石川県立音楽堂コンサートホール・ライヴ

 岩城宏之が残した貴重な遺産、「運命」と第7番です。オーケストラ・アンサンブル金沢とはベートーヴェンの交響曲全集を1994〜95年に録音していますが、この録音は新設されたコンサートホールで録音されたもので岩城の集大成ともいえる力のこもった演奏です。かねてよりベートーヴェンの交響曲は小編成で演奏するのがベストと言っていた証明でもありましょう。
 交響曲第5番「運命」は重厚な響きですすむ演奏です。テンポは速めですが、小節の頭を強調する熱い演奏です。ホルンのファンファーレも力強いです。展開部ではレガートでよどみない演奏、オーボエのカデンツァも素晴らしい。再現部のファンファーレはファゴットで吹いています。コーダへの経過部の厚みのある響きが見事です。小編成とは思えないです。第2楽章は程よいテンポで主題を丁寧に歌います。第1変奏の素晴らしい響き、木管の美しさ、第2変奏では弦楽と木管の対話がきれいに響いています。木管四重奏は大変きれいな響きです。続く全合奏ではティンパニが良い響きです。第3変奏の木管は8分音符を長く伸ばしています。そしてクライマックスの響きも見事です。第3楽章は速めのテンポです。ホルンの主題が明るく響きます。フーガは素晴らしいアンサンブルを聴かせます。フィナーレは重厚な響きが素晴らしい。このオーケストラの底力でしょうか。またヴィオラの音がはっきりきこえてきて小編成のよさが明解です。展開部も良い響きです。木管の美しい響き、トロンボーンの主題の前に低弦の主題がはっきり聞こえます。第3楽章の回想のオーボエが素晴らしい。再現部はこれも重厚な響きをたっぷり聞かせてくれます。コーダの和音の連続、ホルンの主題がきれいです。プレストからが凄いです。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みもよく聞こえています。そして金管の強奏は圧倒的で最後のフェルマータでティンパニの二度打ちが見事でした。
 交響曲第7番は冒頭から良い響きを出しています。オーボエの響きが素晴らしい。提示部は程よいテンポで演奏しています。各楽器のバランスの良い響きが聞き所です。ティンパニの重い響きが調和された響きとして生きています。終結部前のホルン、低弦のフレーズの連続と聞き応えがあります。終結のホルンの強奏は2本のがんばりが凄い。第2楽章は弦楽の演奏が素晴らしいです。岩城がどれだけ思いをこめたかがわかるようです。このアレグレットは聞きものです。対旋律の交錯を聞くだけで感動です。管楽器が主題を演奏する全合奏も良い響きです。第3楽章のスピード感ある演奏も素晴らしい。鮮やかなリズムと管楽器の響きがいいですね。フィナーレは冒頭から圧倒的な響きです。速いテンポで勢いのある演奏です。ベートーヴェンの最もベートーヴェンらしい響きがこの楽章に詰まっています。岩城の目指した演奏がこれでしょう。それにしてもこのオーケストラのパワーとアンサンブルは素晴らしい。コーダの熱い演奏、厚い響きには感動です。


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