1960〜1979年の演奏


ヨーゼフ・カイルベルト/ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団 

CD1(TELDEC WPCS-4121-2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
     8:40/10:09/5:59/8:49
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
CD2(TELDEC 0630 12094-2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   8:40/10:09/5:59/8:49
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

  ヨーゼフ・カイルベルト指揮
   ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1961年

 カイルベルトはバンベルク響とハンブルク国立フィルとでベートーヴェンの交響曲を1番から8番まで録音していました。第9はNHK響と1965年のライヴ録音があり、これで全曲そろいます。CD1とCD2は音質にかわりはありません。LPは売却しており手元にはありません。

 交響曲第5番の演奏は実に重厚で、手兵のオケの持ち味を充分に引き出しています。遅めの第1楽章は弦の響きが見事です。運命の動機はたっぷりと伸ばし、間をとって主部に入ります。ホルンのファンファーレは見事に鳴らしています。sf(スフォルツァンド)が生きています。展開部も強弱をつけて劇的です。オーボエのカデンツァも美しいです。このオケではティンパニ奏者の腕がいいです。コーダ最後の運命の動機は特に強調せずに同じテンポで演奏していました。
 第2楽章は普通のテンポ(アンダンテ)で、主題をたっぷり歌っていました。管楽器も美しく経過部のffもよく音が溶け合っています。気になったのが第1変奏にはいる前の和音で2分丁度のあたり48小節が編集のつなぎ目になっていることです。(演奏がきれいなだけに惜しい。どちらのCDも同じ)第1変奏、第2変奏と文句無しの演奏です。木管四重奏も良い響きでした。第3変奏の木管のところは8分音符を短く演奏しています。そのあとの全合奏は見事なクライマックスを作っていました。
 第3楽章は序奏のリタルダンドのあとにたっぷりと間をおいていました。これは珍しいです。間髪をいれずにホルンのファンファーレに入る演奏が多いですが、カイルベルトは最初に1秒、2度目には2秒の間をおきました。それだけにホルンの響きが大変印象的になりました。トリオのフーガは大変厚みのある見事な演奏です。フィナーレまでの緊張感は見事でした。
 フィナーレの重厚で深みのある演奏はカイルベルトの腕の見せ所でしょう。提示部のホルンの朗々とした響き、展開部の盛り上げ方のうまさ、第3楽章の回帰の繊細な響き、そして再現部の見事な演奏、リズムに乗ったオケの抜群のアンサンブルといい、いうことありません。コーダに入ってホルンの主題とフルートの美しさ、プレストからの弦楽器の見事な演奏、そして最後のティンパニの1打が生きています。

 カイルベルトは廉価盤のLPで聴いたときはレコードのせいであんまり感動しない二流の演奏と思ってしましたが、改めてCDをじっくり聴きますと、これは超一流の演奏です。カイルベルトが今もなお再発売されて親しまれているのは当然のことでしょう。田園とのカップリングのCDはお勧めです。


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