1940年代の演奏

カール・シューリヒト/パリ音楽院管弦楽団(1949)





CD1(LONDON KICC2324) 7:09/9:28/5:02/8:18
CD2(CEDAR AB78 897) 6:58/9:20/5:01/8:03
CD3(Archiper ARPCD0091)6:58/9:20/5:01/8:02
CD4(HISTORY 205641-303))6:58/9:20/5:00/8:02
CD5(Archiper ARPCD0301)6:51/9:04/4:50/7:57
LP(LONDON  MZ-5094) 7:07/9:25/5:01/8:16

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 カール・シューリヒト/パリ音楽院管弦楽団
    録音 1949年6月

 このシューリヒトの第5には大変悩まされました。CD2〜4は録音が1946年と表示されており、これが悩まされる元でした。演奏時間でおわかりの通り、この3枚は同一音源です。CD2と3は全く同じといって良いでしょう。CD4はかなり音質が落ちます。ただしノイズはほとんどなくて低域をカットしたような音です。また3枚ともにピッチが少し高いのです。また各楽章を比較してみますと、1、3、4楽章は49年盤と同じですが、第2楽章の11小節のオーボエがかすれて聞こえないこと、23小節から若干音のふらつきがあることも46年盤の共通点でした。しかし前後は49年盤と同一でした。2楽章だけ別テイクの可能性もありますが、その部分だけというのは考えにくく、マスターの出所の問題と考えます。この怪しい部分さえなければ悩まずにすんだのですが、おかげで46年盤を3つ聞いてしまいました。またCD5はCD3と同じArchiper のCDですが、ピッチがもっと高くてうわずって聞こえます。
  交響曲第5番の演奏は速めのテンポとフェルマータのあとに間をおく冒頭が独特です。ホルンのファンファーレはフランスのホルン独特の明るい音がなんともいいものです。きびきびとした提示部は緊張感がみなぎっています。展開部も密度の濃い演奏です。再現部はファゴットのファンファーレにホルンを重ねています。その後は少し弦が強く、管楽器が押さえられたような録音になりましたがこの楽章は実に見事な演奏です。
 第2楽章はやや速めのテンポです。弦が流れるように美しい演奏を聞かせます。管もレガートで続いていました。第1第2の変奏曲に入る前の弦から管への音の受け渡しがこれほど流暢に聞こえる演奏も少ないでしょう。木管四重奏はフランスの管楽器の美しさがそのまま出ています。第3変奏の木管の8分音符は短めに演奏しています。この楽章もシューリヒトの統率力の巧みさが聞かれます。
 第3楽章は速めのテンポで、リタルダンドもそこそこです。ホルンは大変明るい響きがこのパリ音管の特徴ですがきれいな和音です。トリオのフーガは弦のアンサンブルが大変見事でした。後半の弱奏部分のところはピツィカートと管の音がきれいですが。ヴィオラはほとんど埋もれています。
 フィナーレは厚みのある冒頭がなかなかのものでした。ここもレガート奏法が随所に聞かれます。展開部はクライマックスを作り、第3楽章の回想で一息となります。再現部は冒頭よりも勢いを感じました。コーダはホルンのヴィヴラートのきいた主題が印象的です。ピッコロとフルートの上昇音は大変よく響いていました。プレストからは圧倒的な演奏で、最後のフェルマータは短めです。

 この録音には2ヶ月悩まされましたが、結局5種類の聞き比べをすることになりました。同じ物を集中して聞くということは大変エネルギーを必要としますが、結局同じと分かって安心しました。シューリヒトのスタジオ録音は2種類しかありませんが、もうひとつフランス国立とのライヴも存在します。


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