1980〜1999年の演奏

カルロ・マリア・ジュリーニ/スカラ・フィルハーモニー管弦楽団(1993)
CD(SONY 82876782152)

.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
            (第1楽章リピート:原典版)
2.    〃   /交響曲第4番変ロ長調Op60

  カルロ・マリア・ジュリーニ指揮
   スカラ・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 1993年10月17〜20日
      ミラノ/アバネラ劇場

 ジュリーニが初めてベートーヴェンの交響曲全集を録音したのは母国イタリアのスカラ座のオーケストラでした。この1枚はその全集からの分売です。
 交響曲第5番「運命」はやや遅いテンポで始まる第1楽章は冒頭からレガートによる豊かな響きと長めのフェルマータが印象的です。管のクレッシェンド、ホルンの力強いファンファーレが素晴らしく、ホールの豊かな響きが一層演奏を引き立てます。展開部の豊かな響き、淀みない流れ、そして美しいオーボエのカデンツァと続きます。再現部のファゴットのファンファーレは原典版通りです。
 第2楽章は弦楽の主題がクレッシェンドを強調していて演奏効果を上げています。木管楽器の明るい響きは素晴らしい。強奏部分における低弦の強調は抜群です。第2変奏の弦と木管の対話は聞きものでしょう。木管四重奏の美しさ、直前のテヌートなどはっとさせられます。木管の第3変奏では8分音符を伸ばしています。
 第3楽章はテンポが遅めで序奏の美しい響きと、ホルンの主題の明るさが素晴らしい演奏です。フーガの演奏も見事なアンサンブルになっています。フィナーレは重厚な響きで始まり喜びの表現そのものでしょう。テンポはやや遅めです。展開部は木管の響きを前面に出し、やがてトロンボーンの強奏になります。この楽章の聞き所です。第3楽章の回想のオーボエの美しさ、そして再現部へ突入すると厚みのある響きに圧倒されます。コーダまでの音量は凄いもので、コーダのホルンの主題には癒されそうです。ピッコロの響きは抜群、プレストから終結へはテンポが遅いだけに残響豊かな和音に圧倒されます。まさに名演です。
 交響曲第4番は第1楽章の序奏が弦楽の腕の見せ所ですが、申し分ない演奏で、提示部へのクレッシェンドから提示部の響きは古今の演奏の中でも群を抜くものです。第4番の本来の響きが聞こえてきます。レガートがこれほど美しく響く演奏も少ないことでしょう。第2楽章も同様です。付点リズムをやわらかに演奏するのは難しいと思われますが、実に素晴らしい響きです。第3楽章はやや遅いテンポで内面の豊かな響きを引き出しています。思わず聞き入ってしまいます。フィナーレは遅いテンポで弦の細かいフレーズがはっきり聞こえてきます。重なって響くフルートがきれいでした。


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