2000年代の演奏

延原 武春/テレマン室内オーケストラ(2008)
CD(LIVE NOTES 4783495)

1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命
    (第1楽章、第3楽章、第4楽章リピート:
           ブライトコップ版)
2.    〃   /交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
   延原 武春指揮
   テレマン室内オーケストラ
   録音 2008年4月28日(1)
       2008年5月16日(2)
     大阪・いずみホール・ライヴ

 古楽器演奏によるテレマン室内オーケストラのベートーヴェンです。運命はピッチが430、田園のピッチは432です。
 交響曲第5番「運命」は速めのテンポの第1楽章は冒頭の響きが素晴らしい。フェルマータは短いです。ホルンのファンファーレはホール一杯に響き渡ります。展開部では弦楽と管の見事な交錯があります。まさに対話のようです。ティンパニは強烈な音ではありませんが、よく鳴っています。再現部のファンファーレはファゴットで吹いています。コーダへの経過部の響きは厚みがあります。コーダは圧倒的で切れ目なく終結しますがフェルマータではティンパニのクレッシェンドが強烈です。第2楽章はやや速めのテンポですが表情豊かに歌う主題がきれいです。また木管の柔らかい響きが大変きれいです。第2変奏の演奏も素晴らしいです。木管四重奏ではトラヴェルソ・フルートが良い音を出しています。
 第3楽章は序奏で絶妙なリタルダンドとホルンの主題がきれいです。ホルンのゲシュトップはほとんど気になりません。フーガは弦楽の見事な演奏が素晴らしい。なおこの楽章はリピートがあります。フィナーレは重厚な響きが冒頭で聞かれます。その中でティンパニの音が独特です。またホルンと木管の主題も厚みがあります。提示部のリピートがあります。展開部では弦楽のうまさ、フルートの柔らかい響きがきれいです。第3楽章の回想もきれいです。オーボエがしなやかな響きです。再現部は素晴らしい盛り上がりをみせます。その中でティンパニの重い音が印象的です。コーダの和音の連続、ホルンの主題がきれいです。ピッコロも良く響きます。プレストからの演奏が素晴らしい。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みがはっきり聞こえています。最後のフェルマータではティンパニの二度打ちが凄いです。(なお、使用スコアはブライトコップ版ですが、第3楽章のリピートは新しい版と思われます。しかしながらフィナーレのコーダでホルンの主題が従来の音型であり、内藤彰の使用したスコアとの違いがあります)
 交響曲第6番「田園」は第1楽章冒頭の主題を表情豊かに演奏しています。木管の響きはやわらかでここも美しいです。提示部のリピートがあります。展開部のフレーズの連続がきれいです。古楽器の響きは良いものです。再現部も流麗な演奏がきれいです。コーダのクラリネット、フルートへの流れもきれいです。終結でテンポを少し落としています。第2楽章「小川のほとりの情景」は弦楽の序奏からクラリネットとファゴットの主題が大変きれいです。コーダの夜うぐいす、うずら、カッコーの演奏ではオーボエの音がまさに鳥の鳴き声のようです。第3楽章は冒頭からフルートの響きが印象的です。またホルンの和音がよく響きます。オーボエ、クラリネット、ホルンと続く主題の流れは見事です。ナチュラルホルンの響きがなんともいえません。第4楽章「嵐と雷雨」ではティンパニの強打が恐ろしく雷の響きそっくりです。ベートーヴェンの求めた音でしょう。また豪雨の表現が見事です。ティンパニの叩き方が一様でなく、強弱を付けたため、まさに雷のようです。遠雷から嵐のあとの感謝の気持ちを歌う「牧人の歌」への流れもきれいです。ホルンの導入フレーズは素晴らしい響きです。モダンホルンでは表現できない響きです。絶賛したいです。 


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