田園交響曲

フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団(1961)
CD(RCA 74321 886 812)2枚組

フリッツ・ライナー/ベートーヴェン交響曲集
CD1
1.交響曲第3番変ホ長調Op55「英雄」
2.交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
CD2
3.交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
4.交響曲第7番イ長調Op92

  フリッツ・ライナー指揮
    シカゴ交響楽団
  録音 1954年12月4日(1)(モノラル)
      1959年5月4日(2)(ステレオ)
      1961年(3)(ステレオ)
      1955年10月24日(4)(ステレオ)

 フリッツ・ライナーはベートーヴェンの交響曲を全曲演奏していますが、スタジオ録音はこの他に1番と9番があります。
 交響曲第3番「英雄」は1954年のモノラル録音ですが、録音状態は大変よく奥深い響きが伝わってきます。第1楽章の気迫に満ちた演奏。第2楽章の弦楽アンサンブルの素晴らしさ、第3楽章におけるホルンセクションのうまさなど、速いテンポの「英雄」を聞くのは感動もの。
 交響曲第5番「運命」は速いテンポで分厚い響きの冒頭に圧倒されそうですが、フェルマータのあとに間をおく演奏にはほっとさせられます。絶妙なクレッシェンド、ホルンのファンファーレなどライナーの「運命」には魅力が尽きません。展開部の弱奏の美しさ、オーボエのカデンツァのあとに2秒も間をおいているのにはびっくりです。再現部のファンファーレはファゴットにホルンを重ねています。勢いのある演奏でコーダの運命の主題も長いフェルマータです。第2楽章は程良いテンポで主題を歌っています。低弦の強調、金管の強奏、そして経過部の弱奏の美しさは格別です。木管四重奏は絶品です。第3楽章は序奏で低弦の強調、ホルンの主題の明るい響き、フーガにおける弦楽の厚みのある演奏が素晴しい。そして凄いのはフーガのあとの低弦のフレーズ(アウフタクトの)でしっかり間をおいて、このフレーズを強調しています。「ライナーのルフト・パウゼ」と呼んでもよいでしょう。この解釈は後にも先にもこのライナーだけのものです。フィナーレの重厚な演奏、そしてハーセスの豪快なトランペットはなんともいえません。怒涛の提示部、そして展開部で響くバストロンボーンは豪快です。第3楽章の回想は弱奏におけるスティルのオーボエがきかれます。再現部の厚みのある演奏も素晴らしい。胸のすくような演奏です。コーダのホルンの主題とピッコロの響き、そして一気に盛り上げていきます。プレストから終結までの圧倒的な演奏は拍手でしょう。 
 交響曲第6番「田園」は晩年1961年の録音でそのやわらかな響きはまさに「田園」です。弦と管の絶妙なバランスが聞きものです。第2楽章は流れるような小川のほとりの情景が見事に表現んされています。木管の響きが大変きれいです。第3楽章でホルン・ソロを吹くフィリップ・ファーカスの演奏にも注目でしょう。第4楽章「嵐」の演奏は素晴らしく、ティンパニをこれほどコントロールした演奏は珍しいことで、雷鳴に徹するティンパニの音に注目です。豪雨の中の雷鳴になっています。第5楽章のホルン・ソロは明るくこの「田園」におけるポイントでしょう。
 交響曲第7番はホールトーンをしっかり響かせる第1楽章冒頭の厚みのある演奏が聞き所です。提示部の演奏も素晴らしくひろがりのある録音が雄大な音楽を作り出しています。第2楽章の主題と対旋律のからみは素晴らしく、この第7はベートーヴェンの作品でも二重三重に旋律がからむ傑作ではないかと思います。ファーカスのホルン・ソロもきれいです。フィナーレの厚みのある演奏は圧巻です。


トップへ
戻る
前へ
次へ