1940年代の演奏

ウィレム・メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1942)

CD(テレフンケン4509-95515-2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:44/9:10/5:12/8:40
   (第1楽章リピート:メンゲルベルク版)
LP(テレフンケンMZ5101)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
    7:43/9:06/5:11/8:36
   (第1楽章リピート:メンゲルベルク版)

  ウィレム・メンゲルベルク指揮
   アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
    録音 1942年4月15日

 この録音は1937年5月4日の録音として長いこと発売されていました。1937年の録音を聴いたときに、冒頭の音の違いに驚きました。弦の響きもティンパニの音も全く違うのです。全曲を聞き比べると全く違う録音でした。オーパス盤と1999年のテレフンケン・レガシー盤はこの42年盤とは別物なのに、ジャケットは全部1937年5月4日とは大変なミステリーです。

 交響曲第5番第1楽章は冒頭重々しく、テーマを強調した彼独特のものです。ホルンのファンファーレも力強く強調しています。1937年の録音と比べると弦に張りがあります。ティンパニの響きの違いは楽器の違いよりもセッティングの違いでしょう。展開部では木管が遠く聞こえ、弦楽器が強くなっています。232小節を長く伸ばして間を置くというのはワルターと同じですが、ワルターほどは伸ばしていません。オーボエのカデンツァはゆったりと歌っておりこれがとてもきれいでした。そして440小節から452小節までの木管のフレーズにホルンを重ねて強調するところはここでもやっています。(提示部最後はそのままです)コーダ最後のテーマはテンポを落してしっかり強調していました。
 第2楽章はテンポを微妙に動かしており、メンゲルベルクらしい歌い方になっています。ここも木管は弱く聞こえます。第2変奏の木管の合いの手も弱いです。四重奏はきれいでした。
 第3楽章はゆったりと入りここでも微妙なテンポの動きがあります。ホルンは力強く響きます。90〜93小節でヴィオラとオーボエのフレーズにホルンを重ねて強調しています。トリオのフーガは1937年よりもリズムがはっきりとして切れ味のよい演奏です。ここは決定的な違いです。後半の弦のピチカートははっきりと聞こえますが、管の音は弱いです。フィナーレ前のクレッシェンドは見事です。
 フィナーレは重厚でバランスの良い響きです。展開部でフルートのバルワーザーの美しい音がよく響いていました。3楽章の回想までの盛り上げ方、3楽章の回想の美しさ、そして再現部へのクレッシェンドは凄かったです。やはりメンゲルベルクはでかいことやります。コーダのホルンの主題もきれいです。ピッコロはよく響いていました。プレストはしっかりとそして最後は和音をゆったりと、そして最後のフェルマータはしっかり伸ばしていました。感動的な終わり方でした。
 この味のある演奏を聴く度に21世紀の速い演奏が物足りなくなってきました。でもLPレコードやCDがあるのでいつでも聴けるのがいいですね。
 この演奏の面白いところは40年にやっていた提示部最後でホルンを木管に重ねるところは重ねずそのまま、第2楽章最後のフォルテで木管の上昇音にホルンを重ねるところもやはり重ねていないというのが注目です。


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