1940年代の演奏

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団(1945)
CD(MUSIC&ARTS CD−753)

1.ベートーヴェン/交響曲第3番変ホ長調「英雄」
2.   〃   /交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  5:29/8:44/4:33/7:50(26分36秒)
  (リピート無し:トスカニーニ版)

  アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
    NBC交響楽団
   1945年9月1日録音(1)
   1945年5月8日録音(2) 

 トスカニーニがNBC交響楽団の初代常任指揮者に就任したのは1937年ですから途中の1942〜43年の不和はあったもののオーケストラとの関係は良好の時期と思われます。
 交響曲第3番「英雄」は冒頭の2つの和音とフィナーレ最後の和音がポイントですがここではどっしりとした和音で少し間をおくトスカニーニ独特の指揮でした。勢いのある第1楽章、感情豊かな第2楽章:葬送行進曲と緊張感のある演奏です。スケルツォのトリオでホルンの若干あぶない音もありますがリピート前のホルンのフレーズが長音になっていました。フィナーレの気迫は凄まじいものがあります。最後の和音はしっかり四分音符でした。
 交響曲第5番「運命」は第1楽章がリピート無しです。冒頭のフェルマータはしかり伸ばしていました。ホルンのファンファーレの強奏は素晴らしい。展開部のクレッシェンドは鮮やかで気迫に満ちています。再現部のファンファーレはホルンです。363小節から368小節で木管楽器の音型にホルンを重ねています。また454小節のホルンは四分音符2つですが、これを2分音符に変えていました。
  第2楽章は速いテンポですがが主題はきれいに歌います。内声部ヴィオラの3連符がしっかり浮き立っていました。木管四重奏で若干テンポアップ気味になっているのが興味深いです。第3楽章の序奏でフェルマータを長く伸ばして間をおいてからホルンの主題に入るところはトスカニーニ独特でここは凄いです。またフーガのテンポの速さは凄いです。このギャップは驚きです。フィナーレ前のヴァイオリンのクレッシェンドは緊張感が伝わってきます。
 フィナーレの速いテンポは驚きです。金管の強奏は凄いです。展開部の凄まじいティンパニのあとにくる第3楽章の回帰は再現部への緊張感に包まれ息が詰まりそうです。再現部の音量は凄いです。コーダはホルンの主題から一気にプレストに入りますがその音の渦は凄まじいものでした。あっという間に終わります。この演奏は第1楽章をリピートすれば27分59秒で1938年ライヴとほぼ同じです。


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