1930年代の演奏

山田 耕筰/新交響楽団(1935)
CD(Columbia COCA-13182)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
    8:30/10:54/5:39/8:44
    (第1楽章リピート:原典版)

  山田 耕筰/新交響楽団
  録音 1935年12月19日 

 日本人指揮者と日本のオーケストラによる初めての全曲録音です。新交響楽団はNHK交響楽団の前身でした。大変貴重な録音で、私も2006年に入手するまで存在すら知りませんでした。1977年頃には第1楽章を収録したLPの存在は知っていましたが、全曲録音の存在は驚きました。
 その演奏が驚くほど整然としており、SP録音としても驚異的です。録音も明瞭で、しかもオーケストラの水準もかなり高く欧米の演奏にひけをとらないでしょう。
 交響曲第5番第1楽章は冒頭見事な演奏です。フェルマータは長めで、たっぷり間をおいています。第2主題のポルタメントは当時の流行そのままです。再現部でファゴットのファンファーレを楽譜通りとしたのは作曲家としての解釈でしょう。第2楽章はたっぷりと歌ってくれました。テンポは遅めです。弦楽器の響き、木管楽器の響き共に美しく山田の統率力も見事です。
 第3楽章も明るい響きのホルンが好印象です。フーガのアンサンブルも見事でした。第4楽章も厚みのある演奏です。これが蓄音機から流れてきたら凄いでしょうね。盛り上げも素晴らしいです。コーダのホルンの主題も大変きれいな音で感動しました。
 これは30年後の岩城宏之/N響の演奏と肩を並べる名演といっても良いでしょう。


トップへ
戻る
前へ
次へ