1930年代の演奏

アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団(1938)
CD(Guild GHCD 2223)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   6:45/8:46/4:35/7:55
   (第1楽章リピート:トスカニーニ版)

 アルトゥーロ・トスカニーニ/NBC交響楽団
 録音 1938年10月22日 8Hスタジオ・ライヴ

 この演奏は演奏時間が正味28分01秒、拍手1秒カットして28分丁度の超スピードの演奏でした。1927年のワインガルトナーも速かったですがトスカニーニほどの凄さはありませんでした。
 ロジンスキーに鍛えられたNBC交響楽団が初めてトスカニーニと演奏した運命は同時に放送されていました。まるでどれだけ速く演奏できるか試したような演奏でした。その演奏は全曲にわったて凄まじいほどの緊張感にあふれていて、息をつくひまもないほどです。
 交響曲第5番の第1楽章はまさにアレグロ・コンブリオです。冒頭からこれ以上ないほどの厚みのある演奏です。提示部第2主題で若干テンポを落とすと、すぐにテンポアップですすみます。一気に展開部に突き進むところは凄いです。これは爆演といっても過言ではありません。ティンパニの強打は「あばれ太鼓」に近いです。再現部のファゴットのファンファーレはホルンが吹いています。363小節から368小節で木管楽器の音型にホルンを重ねています。ここは独自の解釈です。スピード感たっぷりの演奏でした。
 第2楽章も速いです。9分を切る演奏はほとんどありません。しかしながらドルチェのメロディーはたっぷりと歌っています。弱音の部分と強奏の部分では大きな差があります。あっという間に終わります。第3楽章は速いテンポながらも序奏のフェルマータはたっぷりと伸ばしています。フーガの凄まじさは驚きです。
 第4楽章前のクレッシェンドから凄い緊張感があります。第4楽章になだれ込む勢いには圧倒されます。展開部からの気迫、ティンパニの強打、祭り太鼓のように叩きまくっています。再現部からコーダも凄まじく、ホルンの主題からピッコロの上昇音型が追いつかないほどの速さです。終結部の強奏、ティンパニの強打、そして最後のフェルマータでティンパニが最後の一打で終わるという劇的な演奏でした。

 このような劇的な「運命」を演奏していたとは驚きです。しかもNBC交響楽団の初めての「運命」がこんな演奏だったとは重ねてびっくりです。聞いている方も力が入ります。


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