1940年代の演奏

ウィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1947-2)




CD1(DGG POCG-9494)7:47/10:57/5:47/8:01
CD2(DGG POCG-3788)7:57/11:06/5:49/8:02
CD3(Delta DCCA-0027)7:41/10:52/5:48/7:59
LP1(DGG SLGM1439) 7:50/11:03/13:56
LP2(DGG MG6006) 7:44/10:55/13:47

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音1947年5月27日
    ベルリン・ソ連放送局スタジオ

 この有名な演奏はフルトヴェングラーが戦後の復帰演奏会を映画館で行った時のものですが、5月25日に始まり同じプログラム(エグモント、田園、運命)を4回続けて演奏したときの3日目の演奏です。この27日の録音は運命とエグモントだけが残っています。なおこの録音はずっとティタニア・パラストでの録音とされていましたが、97年からはベルリンの英国占領下のソ連放送局スタジオでのライヴ録音となっています。
 レコードはLP1が擬似ステレオです。これはグラモフォンが誇るステレオトランスクリプションですが、特にこのレコードは見事に仕上がっており、広がりと奥行きはまるでステレオです。ですからこのレコードを聴いてから、LP2のモノラルを聴くと拍子抜けします。まるで違う演奏を聞いているかのような錯覚に陥ります。実際おとなしくなってしまい、緊張感も半減しました。CD3は若干ピッチが高いようです。

 交響曲第5番の演奏は第1楽章冒頭の動機はゆったりと重々しく始まりますが、すぐにテンポは速くなります。しかしこの重々しいフレーズには彼独特の雰囲気と神々しさが漂っています。ですから思わず手を止めて聞き入ってしまいます。一音たりとも聞き逃したくないという思いにかられます。録音も良くて後から出てくるチェトラやワルター協会のレコードは比べ物にならないほどきれいな音です。5月25日の緊張しきった演奏とは異なりノってきた演奏です。1楽章のコーダ最後のフェルマータの後では間の取り方が尋常ではありません。まだ始まらないのかと聞き耳を立ててしまいます。
 第2楽章も緊張感に満ちていますし、第3楽章はエネルギーに満ちてスリリングです。トリオのフーガの低弦部は速くても乱れることなく突き進んでいます。
 第4楽章へのクレッシェンドは長すぎて今にも失速しそうですが一気に明るい4楽章へ突入しちゃうのは凄いです。そして次第にスピードアップさせていくのがまた聞き物です。聴く者をつかんで離しません。コーダ前の演奏も次第にテンポを速めてきてコーダはスピード違反とも言えるほどに凄まじい演奏です。そして最後にぐっとテンポを落としてくるこの演奏はハラハラドキドキ物です。

 何年経っても聴く者を引き付けるフルトヴェングラーのこの演奏は永遠に語り継がれる名演奏として座右に置きたいレコードです。中でも擬似ステレオ盤は現在は入手困難でしょうがモノラルとは違って臨場感が豊かです。CDがモノラルというのは残念ですが、ウィーン・フィルのスタジオ録音がブライトクランクのステレオで聴かれるのが救いでしょう。


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