1940年代の演奏

エーリヒ・クライバー/NBC交響楽団(1948)
CD(ANDROMEDA ANDRCD5005)3枚組

エーリヒ・クライバー/NBC録音集
CD1
1.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
          (第1楽章リピート:原典版)
2.    〃  /「エグモント」序曲Op84
3.ウェーバー/ピアノ小協奏曲ヘ短調Op79
4.シューベルト/交響曲第3番ニ長調D200
CD2
5.シューベルト/交響曲第5番変ロ長調D485
6ワーグナー/「ジークフリート」から「森のささやき」
7.  〃  /「パルシファル」第1幕への前奏曲
8.  〃  /「パルシファル」から「聖金曜日の不思議」
9.  〃  /「タンホイザー」序曲
CD3
10.チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調Op36
11.J・シュトラウスU/ワルツ「ウィーンの森の物語」Op325
12.ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」

  クラウディオ・アラウ(ピアノ)(3)
  エーリヒ・クライバー指揮
    NBC交響楽団
  録音 1948年ライヴ(1&2)
      1947年12月20日(3)
      1946年3月(4)
      1947年12月(5&11)
      1946年3月10日(6〜9)
      1948年1月3日(10)
      1946年(12)
      (以上モノラル)

 エーリヒ・クライバーが1946年から48年にかけてNBC交響楽団を指揮した演奏の放送録音です。
 ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」はトスカニーニが指揮しているようなスピード感のある演奏です。第1楽章のテンポの速さは普通ですがそれでも速く感じます。冒頭のフェルマータは長めです。そして間をおかずに切れ目なくすすむ演奏は後年と同じです。展開部も音の洪水です。オーボエのカデンツァはフェルマータのあとに一息入れています。再現部のファンファーレはファゴットで演奏しています。コーダまで一気に演奏しています。第2楽章は速めのアンダンテ・コン・モトです。主題の歌わせ方はやはりきれいですが、このテンポはトスカニーニと同じです。第3楽章の序奏はたっぷりのリタルダンドです。ホルンの主題は力強い響きです。フーガの凄まじい演奏はさすがにNBCです。フィナーレは重厚な響きを出しています。展開部における管と弦のからみも素晴らしく、音の古さの中に高い芸術性を感じます。第3楽章の回想もあっという間で再現部の堂々とした演奏も気持ちのよいものです。コーダのホルンの主題とピッコロの強調が聞き所です。プレストからの息をもつかせぬ演奏はヴァイオリンの素晴らしさに驚きます。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みも鮮やかです。最後のフェルマータまで息をつく暇なしの演奏でした。
 「エグモント」序曲は気迫に満ちた素晴しい演奏です。途中に雑音が入るのがもったいないです。
 ウェーバーのピアノのためのコンツェルトシュテュックはクラウディオ・アラウのソロでした。アラウ44歳の時の演奏です。シューベルトの交響曲第3番と第5番はクライバーの貴重な録音でした。第5番のメリハリをつけた演奏はワルターなどとは異なる解釈です。ワーグナーの作品はクライバーの録音が少ないようですが、トスカニーニに鍛えられたNBCにはお得意のレパートリーでしょう。
 チャイコフスキーの交響曲は「悲愴」の録音がありますので、第4番の演奏は興味深いです。クライバーはインテンポでポルタメントを使いながら演奏しています。48年の録音ながら音質は良好で低弦の響きが素晴しい。第3楽章のピツィカートは素晴らしく、かつてのムラヴィンスキーの名盤を思い出させます。フィナーレの速いテンポも同様です。
 「ウィーンの森の物語」はクライバーが得意のウィンナワルツです。ツィターも使われています。演奏スタイルは古きよき時代を感じさせるものでテンポの変化、弦のポルタメントなど楽しめる演奏です。「マ・メール・ロワ」は第2曲「一寸法師」などを聞けばラヴェルの世界に入れることでしょう。


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