2000年代の演奏

朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団(2000.5.3)
CD(EXTON OVCL−00021)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   8:57/10:00/5:42/11:48
  (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)

 朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団
   録音 2000年5月3日 
   アクロス福岡・シンフォニー・ホール・ライヴ 

 これは朝比奈隆のベートーヴェン交響曲、7度目最後の全集となったライヴの1枚です。CDには5月3日の福岡と5月10日の大阪での演奏が収録されています。
 交響曲第5番の第1楽章はどっしりとした冒頭、フェルマータも長く主題をしっかり強調していますので、若干の乱れはありますが、レガート気味の演奏は淀みない見事な響きです。展開部冒頭のファンファーレはゆったりと強調していました。やや遅めのテンポで弦と管の対比をくっきりと浮かび上がらせています。再現部のファンファーレはファゴットです。経過部の響きも素晴らしくホルンの強奏など見事です。重厚そのものといえる演奏です。
 第2楽章は第1楽章のテンポの遅さを考えれば速いと思えるようなアンダンテです。主題を奏でる弦の美しさと管楽器の響きの良さが見事です。理想的なテンポ運びで全合奏の響きが素晴らしいです。第2変奏のあとの木管四重奏は素晴らしいです。
 第3楽章の序奏はリタルダンドとフェルマータの長さがたまりません。ホルンの主題も見事でした。テンポは若干遅めです。そのためフーガは見事なアンサンブルとなっています。
 第4楽章は直前のクレッシェンドの凄い気迫に驚きました。全合奏の重厚な演奏は素晴らしく、ホルンと管のファンファーレも申し分ありません。展開部も厚みのある演奏です。再現部においてもティンパニの響きが大変よく、オーケストラの響きの要となっています。コーダのホルンの主題もきれいです。プレストからの重厚な和音が見事です。また最後のフェルマータでティンパニがスコア通りに2度のトリルを叩くのが感動的でした。
 朝比奈のこの日の演奏は重い第1楽章と軽やかな第2楽章が聞き所でしょう。最晩年のベートーヴェンに人生の重みを感じます。


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