2000年代の演奏

サー・サイモン・ラットル/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(2000)
CD(EMI TOCE−55331)

 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:09/8:56/4:50/10:23
  (第1楽章、第4楽章リピート:ベーレンライター版)

  サー・サイモン・ラットル指揮
   ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  録音 2000年12月1〜3日  ライヴ

 これはムジーク・フェラインでの演奏会の録音でした。ラットルの第5番へのこだわりはかなりのものだったようで、第1楽章もいいですが、第3楽章のフーガの凄まじさは特筆ものです。ウィーンフィルがパート練習をきっちりやったそうですからその出来映えは凄かったです。最後まで聴くと涙が出そうになるほどでした。

 交響曲第5番の第1楽章のテンポは速く緊張感に満ちたものです。フェルマータは長くはありません。この演奏は弦のレガート奏法が特徴です。ウィンナホルンのファンファーレは見事です。展開部の響きは斬新です。オーボエのカデンツァはとてもきれいでした。そのあとの間の取り方もいいですね。再現部からの低弦のがんばりは素晴らしいものがあります。ティンパニの叩き方といい、研究の後がうかがえます。コーダでの微妙な強弱はびっくりでした。
 第2楽章は白眉の演奏でした。ウィーン・フィルの弦と木管のうまさには泣かされます。主題、変奏曲とうっとりさせられます。第2変奏の美しさと盛り上がりは群を抜いています。第3変奏の木管はさわやかなスタッカートになっています。
 第3楽章は良いテンポ運びでした。ホルンのテーマの強奏も気持ち良い響きです。そしてトリオのフーガは今まで聴いた中で最もスリリングで、凄まじい勢いのある演奏でした。何度聴いても胸が高鳴ります。最高のフーガといえます。フィナーレまでの緊張感も素晴らしいものです。
 フィナーレは力強い重厚な響きを出しています。ティンパニの活躍は特筆ものでしょう。ホルンの主題も思いきり強奏しています。64、66小節の第2ヴァイオリンのfp(フォルテピアノ)の強調は目立ちました。気持ち良い解釈です。展開部は3楽章の回想への盛り上がり、回想の美しさが見事、再現部がまた気持ちの良い響きです。ウィーン・フィルが一糸乱れず見事な流れを作っています。これほどの演奏はなかなか聴けません。コーダに入ってからの和音の美しさ、ホルンのフレーズの美しさ、ピッコロの大きな響きと枚挙にいとまがありません。プレストからが凄いです。382小節から385小節のヴァイオリンとヴィオラのりズムの刻みをこれほど極端に鳴らした例は過去にありません。これを聴かされると涙が出そうになります。感動的な演奏でした。
 ラットルのベートーヴェンが半端なものでないことがよくわかりました。全集もいいですがこの第5番はとにかく聴けば聴くほどその素晴らしさがわかるでしょう。


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