1950年代の演奏

ハンス・クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1956)
CD(ENTERPRISE LV929/30)

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
  8:58/11:13/6:18/10:10
  (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮
  ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
   録音 1956年4月9日 ベルリン・ライヴ

 この演奏はドレスデン盤とは異なり原典盤での演奏ではなく第1楽章再現部ではファゴットのファンファーレにホルンを重ねていました。また冒頭のリズムがくずれて、分音符が4つ聞こえる珍しい録音です。まるでシャルクのレコードのようでした。クナがリハーサルを好まないことが裏目に出たようです。
 交響曲第5番の第1楽章は冒頭でズダダダダーンになってしまいましたが、あとはベルリン・フィルらしい立ち直りでした。ホルンもティンパニもドレスデンとは響きが違うので、まったくイメージの異なる演奏でした。テンポはそれほど変わらないのに同じクナとは思えないほどです。オケの響きが美しく、また展開部のオーボエカデンツァはゆったりと歌われ不思議な雰囲気をかもし出していました。ユニークな演奏です。再現部でファゴットのファンファーレにホルンを重ねるのは伝統でしょうか。なおコーダ最後の運命の動機はゆったりと力強く演奏していました。
 第2楽章は美しい響きが見事です。重厚な響きがたまりません。第2変奏の美しさは気持ちの良いものです。クライマックスのクレッシェンドは抜群の演奏効果があります。クナの音楽作りには感動しました。
 第3楽章のテンポは遅いですが明るいホルンの強奏が目立ちます。トリオのフーガはどっしりと重みのある演奏で、アウフタクトの4分音符を強調したところは注目すべきでしょう。
 第4楽章はゆったりと重厚に響かせているのが見事です。ドレスデン盤のように速いテンポでないのでティンパニは重々しく響きます。展開部でのトランペットの強奏は印象的でした。再現部ではテンポが遅いためややアンサンブルにずれがありましたが、強弱をはっきりさせた演奏は素晴らしいものでした。コーダも見事です。


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