1950年代の演奏

カール・シューリヒト/パリ音楽院管弦楽団(1957)


CD1(EMI CZS7 62910 2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   7:30/9:39/5:10/8:27
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
CD2(WANER 50999 6 23379 2 2)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)
LP(EMI EACー30115)
 ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
    7:30/9:40/5:11/8:27
   (第1楽章リピート:ワインガルトナー版)

  カール・シューリヒト/パリ音楽院管弦楽団
   録音 1957年4月25〜27&29日 

 この録音はフランスEMIがシューリヒトを起用してベートーヴェンの交響曲全集を録音した中の1枚です。年代的にはステレオで録音されてもおかしくないのですが、フランスEMIでは機械の導入が遅れたらしく、ステレオ録音は1958年に第9だけモノラルと平行して録音されました。したがってこのCDの全集はモノラルです。ステレオ録音の第9はLPで持っています。CD2はWANER盤の全集です。

 交響曲第5番の演奏はやや速めのテンポで、49年盤と大差ありません。しかしホルンのファンファーレの力強さはこちらが上です。ほとんど理想的なスフォルツァンドです。展開部は少しトランペットが目立つところがありますが、そのくらいの方がよいと思います。流れは抜群でオーボエカデンツァの一息のあとも圧倒されます。ファゴットのファンファーレはホルンを力強く重ねています。かなりご機嫌な演奏です。清清しさを感じます。悲壮感のない明るい演奏でした。
 第2楽章は49年盤と同じような流れですがバランスの良さはこちらのほうがはるかに上です。第1変奏は管を抑えて弦楽器にたっぷり歌わせています。強奏部分ではレガートで演奏しており、シューリヒトの個性がはっきり出ています。第2変奏の低弦もきれいです。そのあとの8分音符の連続もきれいなレガートで演奏していました。木管四重奏は聞き物でした。第3変奏の木管は8分音符をここでも短めに演奏しています。そのあとのクライマックスは見事な響きを出していました。さわやかな演奏でした。
 第3楽章はこれも冒頭のリタルダンドは軽くかけています。ホルンは明るくきれいなものです。トリオのフーガは力強くスリリングです。なんというかこんな響きもあるのだと感心しました。後半の弱奏部分は管楽器がよく鳴っていますが、ちょっと強いかと思いました。
 フィナーレはトランペットが高らかに響いており、本来こんな響きがあってしかるべきと思いました。ホルンの主題も充分響かせていますし、展開部の厚みも抜群です。トロンボーンの高らかな主題もフランスの金管の底力を見せつけているかのようでした。第3楽章の回想ではオーボエがここもなぜか高らかに歌っているのですが、これは強いですね。あっという間の再現部突入でした。この再現部もやはり圧倒的な演奏です。熱いものを感じます。この響きを聞きたくて第5を聞いていますが、なかなかこんな演奏にぶつかりません。コーダのホルンの主題の美しさ、フルートとピッコロの高らかな音、実に興奮させます。これがステレオ録音だったらまた感動も違ったものになったでしょう。最後のフェルマータはたっぷり伸ばしてくれました。圧倒的な名演といえましょう。


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