2000年代の演奏

内藤 彰/東京ニュー・シティ管弦楽団(2004)
CD(Delta DCCA−0012)

.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
    (6:41/8:30/7:34/10:07)
    (第1楽章、第3楽章、第4楽章リピート:
          新ブライトコップ版)
2.   〃   /交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」

  内藤 彰指揮 東京ニュー・シティ管弦楽団
   録音 2004年4月24日(1)
       2003年11月26日(2)
       東京芸術劇場大ホール・ライヴ

 内藤彰は山田一雄、小澤征爾、秋山和慶他に師事しています。東京ニュー・シティ管弦楽団は1990年に設立され初代音楽監督が内藤彰です。このコンビがとりあげたベートーヴェンのスコアは流行のベーレンライター版ではなく、従来使われたブライトコップ&ヘルテルの新しい版です。他にはほとんど聴かれないスコアは、聴いている方にはさほど変わりはないように思われますが、演奏する方はかなりの違いがあります。
 交響曲第5番「運命」の第1楽章は速いテンポで運命のテーマを演奏しています。フェルマータの後に間をおかない演奏です。ホルンのファンファーレはきれいです。ティンパニはよく響きます。提示部、展開部ともに勢いのある演奏で、淀みない流れが聴く者を引きつけます。再現部のファゴットのファンファーレはファゴットが吹いています。コーダにかけてのティンパニの強打は迫力があります。第2楽章は少し速めのテンポですがきれいな響きを出しています。木管の美しい響きに注目でしょう。第3楽章はギュルケ版同様トリオの後でダ・カーポになり再度頭から演奏されます。トリオのフーガは見事な演奏です。フィナーレは重厚な響きで、ティンパニがよく響いています。提示部のリピートがあります。展開部から第3楽章の回想はよくまとまっていました。再現部も良い響きです。最大の聞き所はコーダで、和音のあとにファゴットが吹く「ソドソミーレードソー」の後に吹かれるホルンが同じ「ソドソミーレードソー」になっていることです。再度吹かれるフレーズは従来通り「ミドソミーレードソー」ですが、この違いは作曲当時の写譜の間違いではないかという説のようです。プレストから終結までの迫力は満点です。最後のティンパニの強打には圧倒されます。
 交響曲第6番「田園」はやや速めのテンポでさわやかな雰囲気の田園を感じます。管楽器の響きは大変きれいです。第2楽章ではこの新ブライトコップ版の違いがわかります。65小節の1拍2拍でフルートとオーボエのスラーがスタッカートになっています。また84小節の3拍4拍の和音が短調から長調に変わっています。いずれも聴いていてはほとんどわかりませんが演奏者には大変な違いです。この楽章は素晴らしい演奏です。第3楽章は楽しそうです。オーボエ、ホルンのソロがきれいです。第4楽章「嵐」の表現は素晴らしく、ティンパニの響きはまさに雷鳴です。第5楽章のクラリネットそしてホルンのソロの美しさは絶品でしょう。


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