2000年代の演奏

トーマス・クルーク/アンサンブル・リフレクター(2017)
CD(Paschenrecords PR 190050)

1.ベートーヴェン/序曲「コリオラン」ハ短調Op62
2.ラモー/歌劇「レ・ボレアド」第4幕第4場より
     「ポリヒュムニアのアントレ」
3.テュール/パスとトレース(道と痕跡)
4.ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調Op67「運命」
   (第1楽章、第4楽章リピート:原典版)
    6:48/8:29/4:39/10:45

 トーマス・クルーク指揮
  アンサンブル・リフレクター
 録音 2017年11月
 ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会

 ドイツの若手音楽家たちによって設立された「アンサンブル・リフレクター」のデビュー・アルバム。アルバムにはGEWALTAKT(暴力)というタイトルがありますが、音楽の圧迫感のようなものを感じさせる作品を選んで演奏しているようです。
 ベートーヴェンの序曲「コリオラン」は冒頭の和音に続く強烈な全合奏の一打が圧倒的な響きです。その後は素晴らしい演奏で若さふれる見事なアンサンブルです。コーダに強烈な部分もきますが、最後は静かに終わります。
 ラモーの歌劇「レ・ボレアド」第4幕第4場から「ポリヒュムニアのアントレ」が演奏されます。これはこのアルバムの美しい間奏曲として演奏しているようです。強烈な響きはありません。
 エルッキ・スヴェン・テュール(1959〜)の「パスとトレース(道と痕跡)」は弦楽のための作品で2005年に書かれています。現代作品で、静かに始まりますが、やがて弦楽器が互いに絡み合い、語り合いながら、パスとトレースを表現しています。力強さと圧迫感も感じさせます。このアルバムのポイントとなりそうな演奏と作品です。
 ベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」は交響曲第5番「運命」の第1楽章冒頭はピリオド奏法による演奏でフェルマータはやや短めです。それでも「運命の主題」は強烈な響きです。ホルンのファンファーレも圧倒的な響きが素晴らしいです。提示部の演奏はよい響きです。展開部冒頭のホルンは力強い響きです。管と弦の対話もよい響きです。オーボエのカデンツァはきれいです。再現部のファゴットのファンファーレは大変よい響きです。そしてオーケストラの厚い響き、コーダまでの演奏、終結も圧倒的な響きです。第2楽章はやや速めのテンポで歌います。全合奏は重厚な響きです。低弦もよい響きです。第1変奏は弦楽の良い響きが流れます。木管の響きもきれいです。経過部の演奏も素晴らしいです。第2変奏はクラリネットとファゴットの合いの手がきれいに響きます。全合奏も素晴らしいです。木管四重奏は大変きれいな演奏です。全合奏も迫力あります。木管の第3変奏は音を短く切った演奏ですがきれいな演奏です。第4変奏のファゴットがよい響きを出しています。コーダも圧倒的な素晴らしい響きです。第3楽章の序奏はリタルダンドのあとのホルンの主題は力強い響きです。弦楽もきれいな演奏です。フーガは弦楽器の勢いのある演奏で緊張感があります。ファゴットの演奏も素晴らしいです。後半の弱奏部分は管と弦楽がきれいな演奏です。フィナーレの演奏は厚みのある響きの冒頭は見事です。ホルンも大変よく響きます。提示部のリピートがあります。管と弦のバランスの良さ、ティンパニはよい響きです。展開部では木管やホルン、トロンボーンがよい響きを出しています。第3楽章の回帰は木管が大変きれいです。再現部は厚い響きが素晴らしいです。コーダの和音、ファゴット、ホルンと続く主題とピッコロの響きがきれいです。プレストから終結までの演奏は見事で、最後のフェルマータまで圧倒的な響きの演奏です。これは見事な演奏です。


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